971~980
971.
庭にスイカが現れた。人の頭よりもずっと大きな、見事な丸いスイカ。目鼻口と胴体と手足がなければ美味しそうなスイカ。だらりと下げた右手には鉈。隼が庭の光景に凍りついていると、ひょっこり現れた薔薇が目を輝かせる。「カモがネギ背負ってきた!」スイカはあっという間に逃げた。
972.
転寝から起きると、膝に黒猫が丸まっていた。うちの猫じゃない。猫が隼を見上げる。黒い獣毛に覆われた、老人の顔をしていた。にんまり笑う、口の中は血を含んだように真っ赤。払い除けて飛びのくと、人面猫はひらりと飛び跳ね、TVの中に飛び込んだ。TVは二度とつかなかった。
973.
突然の激しい雨に悪態をついて薔薇は走る。だいたい雨の気配は察知する自信があるのだが、今日はあまりに急だった。全力疾走していると前方にゆったり歩く鶺鴒の背中。潔くびしょ濡れだ。「もうすぐ止むよ」「え、そうなの?」靴底滑らせ、立ち止まる。「そろそろ泣き疲れる頃だから」
974.
広げたビニールシートの上には山盛りのひまわりの花。薔薇が胡坐をかいて座り、一心に種をとっている。来年植えるだけでなく、食べるためだ。ざらざらと細い楕円形の種がザルに盛られる。小さな手や触手がそうっとちょっとずつ取っていくが、たくさんあるから良しとする。
975.
買ってきた梨がない。食べられたのか。殺気立った目つきで薔薇が部屋を見回す。視界の端に動くもの。かなり怖い速さで飛びかかる。捕まえたものを見つめて、薔薇は思考停止した。足が生えてる。梨に。人間的な、凄い筋肉質の、足が。小一時間悩み、窓から庭へ全力投擲した。
976.
寝返りを打つと、枕に包丁が刺さっていた。飛び起きようとして、隼は思い止まる。こめかみがちりちりする。そっと目だけ動かすと、近過ぎる距離になにかある。ズス。顔に添うように包丁がもう一本ベッドに縫いとめられた。朝に気づいたとき、包丁はなかったが、髪がやたら抜けていた。
977.
転寝から起きると、膝に竜がとぐろを巻いていた。夜の湖面のような艶やかに煌めく鱗が綺麗な黒竜だ。奇跡のように見事な鼻提灯が呼吸に合せて膨らんだり縮んだりしている。そこへ飼猫の伊庭の猫パンチ。竜は鶺鴒の膝から転がり落ち、十秒くらい世界が間違って夜になった。
978.
転寝から起きると、膝に飼猫が寝ていた。盲目の君影にしては珍しく熟睡している。薔薇としては立って何か食べたいが無碍にはできない。その目の前を、青い金魚が優雅に横切った。目が合う。入眠時幻覚か。慌てて逃げる青い金魚。窓をするりと出て行った途端、空が青く晴れ渡った。
979.
食べすぎた~と満足げに薔薇が床に転がった。そらこれだけ食べればねと大量の食器を片付けながら兄たちは笑う。洗うのと拭くのを分担して片付けを終えて振り向けば、大の字で爆睡している妹。その周りにドサドサと腹を丸く膨れさせた獏が転がり出てきて、とても邪魔だ。
980.
隼が帰宅すると居間のソファに人形が座っていた。見た事のない、とても美しい球体関節人形。黒いドレス、黒いマリアベール、黒いウェイブした髪。思わずベールに手を伸ばし、横から兄に掴み止められた。鶺鴒は人形を抱きあげ居間を出て行く。くすくすと甘い笑い声が聞こえた気がした。
972話は、ツイリミしていただきました。
ありがとうございます。
めちゃめちゃ嬉しかったです。
あんまりそうは見えないかもしれませんが。
特に記載はありませぬが、ツイリミフリーでございますので、どんどこお願いします。
超お願いします。
めっちゃ喜びます。
あんまりそうは見えないかもしれませんが。




