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ツイノベ作品集  作者: 黒目ソイソース
71/137

701~710

701.

ブーツを履いた猫がバラの花束を持って玄関に立っていた。真剣な眼差しで、応対に出た隼を見つめている。「君影さまはおられますでしょうか」「……い、います、けど…」隼がしどろもどろしていると、伊庭がトテトテやってきた。「ニャ」「そうですか…」猫は項垂れて帰っていった。


702.

薔薇の髪はサラサラで綺麗だとよく褒められる。特に気を使ったことはないが、たぶん父からの遺伝だ。今日もドライヤーでガンガン乾かしていると、突如背後に髪の毛の塊がぬうっと現れた。髪の中には目玉が一つ。「シャンプー何使ってますか?」なんとか掠れ声で答えると、髪は消えた。


703.

黄昏色の空の下、家路を急ぐ隼の背になにかが張り付いた。驚く間もなく、カラスが突撃してきたので反射的に鞄を振り回す。カラスはギャースとか喚きながら飛び去っていった。すると背から一匹の蝙蝠がぽとりと落ちたので、空に放ると飛んでいった。以来家の周りで蚊や害虫を見ない。


704.

ふと見上げると、満月に近い金色の月が輝いていた。月の影もはっきりと見える。兎が餅つきしているとよく言われるが、薔薇は蟹派だ。蟹説も少なくないが兎よりは少数派といえる。眺めていると雲の塊が月に被さってしまった。まばたき。真っ二つになった雲の間から蟹の鋏が覗いていた。


705.

犬の鳴き声が聞こえる。犬好きでなくても哀れを誘う、何かを探しているような悲痛な甲高い声―姿はない。何日かして、行きかう人々の耳をつんざいた鳴き声は消えた。鶺鴒はいつものように家の玄関に入る。いつものように猫の伊庭が迎えにくる。「ワン!」元気の良い犬の声も加わった。


706.

トイレのドアを開けると、そこは白い砂浜と青い海だった。とりあえず薔薇はドアを閉め、深呼吸してから再び開けた。ざざーん、ざざーん。青から透明の変る波が打ち寄せ、ヤドカリがカサコソ通り過ぎる。閉めて居間へ行き、鶺鴒を叩き起こす。「なんだよ、綺麗な海辺の夢見てたのに」


707.

「もしもし私メリーさんです…」非通知に出たら可愛い声が言った。普通に考えれば悪戯だが、女の子の声は半泣きで震えていた。薔薇は鶺鴒に受話器を譲った。「主にネット発の対策がキツイ?うん、うん…」数分後。「こうして妖怪は滅びてくのかな」兄は遠い目をして受話器を置いた。


708.

天気が良いので夏が来る前にエアコンを掃除することにした。フィルタだけでなく外して洗えるところは全て、庭でザブザブ洗った。家中のエアコン全てを掃除し終え、隼は清々しい気分でエアコンのスイッチを入れた。心地好い冷気と共に青い紫陽花がぽろぽろ溢れだした。


709.

胸の中に重くてどろどろしたものが淀んでいる。鶺鴒は隼と違って「当てられる」ことは滅多にないが、最近寒暖差で体力が落ちていたせいで喰らった。突然柔らかいものが背にもふっと触れた。ふうっと楽になる。吃驚して顔を上げると、路地の奥で狛犬が台座に飛び乗ろうとしていた。


710.

隼は携帯電話を見ながら横断歩道で信号が変わるのを待っていた。くいっと袖を引かれて、振り向く。しわしわの細い手が――手首から先だけが服を引いていた。引かれるままに隼は数歩後退る。カーブを曲がり損ねた大型トラックが歩道の上を思いっきり通過したのは、次の瞬間だった。

大変中途半端な話数ですが、お知らせです。

ツイッターの方では何度か告知しておりましたが、6月より新たな縛りでツイノベ投稿を開始します。

ただ、このシリーズはとても愛着を持っておりますので、その日の気分でこっちを書いたり、新縛りで書いたりしていきたいと思っております。


結局何が言いたいのかと申しますと、10話溜まるのが不定期になり、更新も不定期になる、ということです。


更にまったりと進行していきますので、まったりとお付き合い下さい。

新縛りの方も10話ぐらい纏まったらこちらに投稿いたしますので、お暇でしたら覗いていただければと思います。

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