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ツイノベ作品集  作者: 黒目ソイソース
45/137

441~450

441.

もくもくとわき起こる入道雲と青空から一転、けぶるほどの豪雨が叩きつける。すぐ近くに眩しいほどの青空があるのに、家の中にいてさえ驚くほど激しい雨音だ。なんとなく隼が眺めていると、白い滝の中を優雅に泳ぐ何匹もの金魚が雨といっしょに横切っていった。


442.

民家で葬儀が営まれていた。通りかかった隼は、急に真冬になったような悪寒に足を止めた。弔問者の列に異様に背の高い黒ずくめの男がいる。男は凍りつく隼に気付くと帽子をとって微笑を返してきた。弾かれたように走り出すと突如豪雨と共に雷光が迸る。隼は悲鳴を振り切って走った。


443.

でかい猪が庭に立っていた。流石の薔薇もびびって固まった。猪は庭木にのしのしと歩み寄り、鼻面を寄せた。ぶしゅーんという鼻息とともに木の葉が一瞬にして紅葉した。だがすぐに緑色に戻ってしまう。猪は何度か試した後、諦めたのか薔薇を無視して門から去った。夏はまだ続くようだ。


444.

居間のカーテンは少し丈が短い。15センチぐらい床から浮いている。その隙間から二本の足がみえている。窓とカーテンの薄い隙間に人が立てば膨らむはずだがそれもない。隼が思わず見つめていると猫に追われたヤモリが裸足の足を駆け上った。足は必死でヤモリを振り落とし消えた。


445.

目隠しした薔薇が、ビニールシートに置かれたメロンを前に鉈を持って庭にしゃがんでいる。西瓜割り的なことがしたいらしいが、画的に怖い。鶺鴒の見ている前で、薔薇は鉈を振り上げ振り下ろす。対面にしゃがんだおかっぱの女の子はメロンをさっとどかしてまた戻す。終わりそうにない。


446.

「ニホンカワウソ絶滅」朝見たニュースが、オレンジ色に染まる空と金色に輝く川を横目に歩いていた隼の脳裏に過ぎった。この辺りは緑が多くて狐も狸は勿論熊や鹿、雉も出る。カワウソもひょっこり顔を出さないだろうか。ばしゃっと水が跳ねた。はっきり見た。河童と、その友達だった。


447.

洗濯物を取り込もうと薔薇は庭に下りた。衣服やタオルを腕に抱えていく。最後に、やたらと長い白い布を手にとって、首を傾げた。こんなのあったっけ、と思いながら折り畳んで家に持ち込む。アイロンを出して戻ってくると、謎の白い長い布は消えていた。


448.

隼が夕暮れの公園を通りかかると、血のように赤い着物の七歳ぐらいの女の子が悲しそうな顔でブランコに座っていた。隣には鶺鴒がいる。「鬼ごっこしたいなあ」可愛らしい声で女の子が呟く。「君が鬼になるといろいろまずいからなあ」やっぱり、と思いながら気付かれる前に隼は逃げた。


449.

角をまがった瞬間、思いっきり人とぶつかった。謝る間もなく相手の方からなにか荷物が飛んできて、薔薇は慌てて受け止めた。生首だった。「ナイスキャッチ!」生首が白い歯をキラめかせて満面の笑みで言い、サムズアップしてた首なし胴体は、薔薇の手から首を受け取り去っていった。


450.

子どもがケンカをしているようだ。ふくれっ面で涙目なのはよく日に焼けた半袖半ズボンの元気そうな子。しゃがみこんでわんわん泣いている子は、今の時期少し暑そうな薄手の長袖を着ている。傍らに困った顔で佇む鶺鴒がいるので寄っていって事情を聞く。「交代するしないで揉めてね」

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