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ツイノベ作品集  作者: 黒目ソイソース
13/137

121~130

121.

鶺鴒の笑い声がする。また何かにじゃれられてるのかと隼は窓から庭を見た。細長い体は4メートル程、鰐の様な頭に鹿に似た角を生やし、金の鬣と髭、緑や青に美しく煌めく鱗。頭を兄の膝に乗せて尻尾をぱたぱたと降っている。更に長く太い影が空を覆った気がして隼はカーテンを閉めた。


122.

賑やかな笛や太鼓、喇叭、鈴の音、楽しげな笑い混じりの歌声が聞こえる。隼は裸足で玄関の鍵を開けていた。早くしないとあの楽しい音楽から置き去りになる。手を掴まれた。顔を上げると、鶺鴒の夜の様な目と目が合う。はっと我に帰る。途端、扉の外で罵詈雑言と物を壊す騒音が轟いた。


123.

深夜3時に窓を叩く音。隼は二段ベッドで眠る兄を叩き起こす。目をこすりながら起きた兄は、カーテンの閉まった窓を眺めてから、無造作にカーテンを開いた。いいのかよ!というツッコミは喉の途中で詰まった。窓外にでかい目玉が浮いていた。「あ、間違えました」目玉は、瞬きするように消えた。


124.

心霊スポットへ行くなと鶺鴒は言わない。人外は好きな時に好きな処へ現れて襲ってくるからだ。黄昏時、道に幼稚園児がしゃがんでいた。鶺鴒の前に、鳩が一羽舞い降りる。園児の口が耳まで裂け、伸びた六本指の手が鳩を掴んで丸飲みにするとケケッと笑って壁を飛び越えていった。


125.

隼はゲームが上手い。難易度の高いモードも一度でクリアする。すぐ攻略するが隠し衣装や裏ルート探索に挑戦し楽しみつくしている。だがタイムアタックだけは遊べたことがない。いつも必ず最後の最後で画面が消える。そしてジジジジジと嘲る様な音がして最初の画面に戻るのだ。


126.

薔薇が幼稚園児の頃、夕暮れ一人で道を歩いていた。案の定変質者に追いかけられて逃げ、川へ落ちた。水を飲み、意識が完全に消える前に、筋肉質の手に頭を鷲掴みにされ岸へ投げられた。むせながら見上げ、確かに見た。牛のような二本角を頭に生やしと赤い肌の筋骨隆々としたモノの背を。


127.

駅前の大型書店に幽霊が出る。本が見つからず困っていると視界の端に店員さんが入り込む。声をかけようと追いかけるうちに、目的の本棚につけるというのだ。ただ文庫の案内率が異常に低い。鶺鴒が重そうにテーブルに広げるハードカバーは、先日文庫版が出たばかりのベストセラーだ。


128.

大きな蝸牛が這っている。双子が子どもの頃にはよく見かけた、けっこう大きな奴だ。薔薇は初めて見る大きさに「外来種?」とか言っている。だが、日本産の蝸牛のはずだ。なにしろ、巻貝の上に、上品なピンクの紫陽花模様の着物を着た貴婦人が、傘を差して横座りしているのだから。


129.

夕暮のバスの中、隼はうたた寝していた。感覚的にそろそろつくかと目を開く。深い森が広がっていた。幹の太さは大人が数人手をつないで輪を作れるものばかり。空はバスの走る道路の上に青く細く見えるのみ。ぽかんとするうちトンネルに入り、抜けるとそこはいつのもの町の風景だった。


130.

隼にとって薔薇も謎の人物だ。隼はいつもどおり、逢魔時の通学路を、身長よりでかい鋏を持った老婆に猛追されていた。角を曲がると丁度薔薇がいて、正面衝突。隼だけが吹っ飛ぶ。転んだまま逆さに老婆を見れば、妹を見た途端に、電柱を駆けあがり、電線の上をダッシュで逃げていった。

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