表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

穴のあいたバケツ



 私は、穴の空いたバケツみたいだと思った。


 どれだけ水を注いでも、満ちることはない。

 底のどこかに空いた穴から、気づかないうちに抜け落ちていく。


 日中は、ほとんど眠って過ごした。

 赤ちゃんはそばにいて、泣いたり、笑ったり、小さな存在でここにいる。


 手を伸ばせば触れられる距離に、ちゃんと温度があるのに。

 それでも、心の内側だけが空洞みたいに軽かった。


 満たされていないわけじゃない。

 満たされたものが、残らないだけだ。


 夜になって、誰かと話した。

 声を出して笑ったし、楽しいとも思った。


 その瞬間だけは、確かに水が注がれていた。


 でも、終われば同じだ。


 静けさが戻ってくると同時に、内側もまた軽くなる。

 さっきまであったはずのものが、跡形もなく消えている。


 どこから抜けているのかはわからない。

 いつからこうなったのかも、思い出せない。


 気づいたときには、もうそういうものになっていた。


 埋めようとするたびに、減っていく。

 足そうとするほど、空っぽがはっきりする。


 なら、もうやめればいいのかもしれない。


 そう思っても、やめることもできない。


 赤ちゃんは泣くし、時間は進むし、夜は来る。


 だからまた、少しだけ水を注ぐ。


 どうせ抜けていくとわかっていても。

 どうせ残らないと知っていても。


 何もないよりはましだと思ってしまう。


 そしてまた、軽くなる。


 何度繰り返しても、底は満たされない。


 私は、穴の空いたバケツのまま、減っていく。


 それが埋まる日が来るなんて、もう考えていない。


 ただ、抜け続けている。


 それは、私がおかしくなってしまったのか


 わからない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ