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凶器の話
ガキがこっちに来るために死体を横に倒した。パリパリと手のあたりで固まってた血塊が剥がれて落ちる。握られていた凶器が傷口から抜ける。
「……わぁお」
カッターナイフや包丁ですらなく、それは単なるハサミだった。先端が丸くて握りが黄色い、百五円ぐらいで売ってそうなちゃっちいやつだ。
ハサミとは当然のことながら挟んで切るためのモノだ。先端が尖った鋭いタイプならともかく、あのハサミで人間みたいな固いものに突き刺すために使うにはかなり微妙な握りが必要になる。俺にだって一発でできるかは怪しい。
偶然?
ああ、冷静に考えたらそうだろうよ。だけど俺はどうしてもそうは思えなかった。
こいつは死神だ。
なぜなら涙を流していなかったから。
どうして泣いてないとわかったのか? 血が渇くまでずっと泣いてて俺が来る前に泣き止んだだけかもしれないのに?
答えは簡単だ。
こいつの顔にはなかったんだ。
血が渇いたあとはあったのに、
涙が渇いたあとが。




