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魅いられる  作者: 月島 真昼
二章 愛川既死期の殺人学校
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殺意の話 圧倒の話


 けどあっちが殺す気ならこっちも遠慮なし。眉間に『鉛筆』を突き立ててやろうとする。もう片方の腕にもいつのまにかナイフが握られていて顔面から喉を狙って突き出される。あっちのほうが早い。反射で起動を変えてナイフを弾く。こちらのナイフは真っ黒だった。

 手を痺れさせた美少年が硬直。しかし隙というほど大きな隙間はなかったため私は二、三歩後ずさる。刺された腕が焼けるみたいに熱い。

「流石、奇術使い愛川。素手でナイフ払うかよ」

 一息の後に前進。腕を振るう。瞬間、


「動くなっ!」


 誰かの声が響いた。美少年が停止する。

 美少年の背後から相変わらず小さな背丈の女の子が歩いてくる。

「手を上げろ。武器を離せ。そいつから離れろ。それ以外の動作を取れば地獄の苦しみの中で殺す。親兄弟からただの知人に至るまで全て殺す」

 空気が痛かった。鉛を吸ってるみたいだ。本物の殺気には力があるのだと私は初めて知った。

 殊更切味の殺気はその場から動けなくなるほど圧倒的だった。

「……なんだよ、お前」

 後ろを向いたまま武器は手離さない。然り気無く体の前にナイフを持っていき切味ちゃんの視界から隠す。切りつけるタイミングを計ってるようだ。

 切味ちゃんは無防備に近づいてくる。あと三歩ぐらいのところで振り返った。こめかみあたりに直撃するコースで赤いナイフが走る。切味ちゃんはその手に真っ直ぐ平手を突き出した。軌道を変えられたナイフがそのまま美少年の頬を貫く。切味ちゃんは直後に鳩尾に爪先を捩じ込んだ。倒れる。

 殺すと宣言した切味ちゃんの攻撃がこの程度で終わるはずもなかった。

 離れ際に男の子の黒のズボンからナイフを一本抜き取る。そこでようやく私はどこからともなく現れたナイフが昆虫の保護色と同じ原理で隠されていたことに気づいた。見事な色合いで同化している。

 そのあたりでうっすらと人の声が聞こえてきた。

「おっと。時間切れかの。既死期」

 私は抜けていた腰を無理矢理立たせた。




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