エピローグ:とある日の機時惨告
「愛川誕生、あなたは無意味でした」
私は爆散した機時惨告と愛川誕生の肉片を見下ろして狂人のように呟く。
私は眼鏡を掛けていて染めていない髪を後ろに流している。灰色のスーツの上下が似合っていないが自分にもそれがなぜかはわからない。
私の名は機時惨告、正確には機時惨告十四という。
私は焼け跡の中から愛川の肉片を拾い上げる。人間の中身の匂いがする。
「愛川誕生、あなたは個人としての復讐だけでなく機時惨告への嫌悪として、
あなたのような者を二度と出さないため戦ったのでしょう。
しかし機時惨告とは個人の名称ではない。
『人間の恐怖にこの上ない喜びを覚える人間』
その二十六名全てが機時惨告なのです」
私には愛川という一人の殺し屋の死が惜しくて堪らない。
私は無能な人間は全て優秀な人間に奉仕すべきという理想を持っている。優秀な人間の快楽のためならば凡人は死すら受け入れるべきだと思う。だから私は優秀な自分が人間の恐怖の表情を見るためならば他人の命を惜しまない。
しかし愛川は違う。凡人ではない。
『魔術師』を殺し、
『捕食者』を退け、
『怪物』を制した。
愛川は優秀な人間だった。
死してはならない側の人間だった。
「せめて墓標を立てましょう。あなたの愛した少女の血でも添えて」
私は足を止めた。
「なぜあなたが? もう愛川は……」
私は言葉を続けることが出来なかった。そこにいる人物がただそこにいるだけだと言うのに凄まじい殺気を放っていたからだ。




