エピローグ:とある日の殊更切味
「困ったのぅ」
わしは愛川に薬を打たれて変になってしまったらしい。妙に胸が疼くのである。どうやらあれが好きで好きで堪らなくなってしまったようじゃ。
愛川を探そうと思ったが愛川も機時もどこにもおらん。気持ち悪い肉片が飛び散っておるし焦げ臭い匂いもするのでビルを出てみたのじゃが一人は心細い。全く世知辛い世の中じゃ。ところで世知辛いとはどういう意味じゃ? わしは正月に食うオセチが大好きなのじゃがあれと関係のある言葉かの? などとよしなしごとを考えながら歩いておったら「裸阿面」なるダメそうな暖簾の掛かった店に愛川の連れておった女を見つけた。
「おじょーちゃん、一人かい? 保護者の方と来てくんな」
むう、一人で金を稼いでおる身じゃというのに子供扱いしおって。
「……その子とはここで待ち合わせしてたんだ。入れてやってくれ」
誰かの助け舟でおっさんが退く。おっさんにあっかんべーしてやった。親切な誰かの隣に行くとそれに見覚えがあった。
「おぉ、二十三ではないか」
「影打で頼む」
なんだかわからぬが頷く。
「何しに来たの?」
女が怪訝そうな顔をしおる。
「愛川誕生を探しておるのじゃが、心あたりはあるかの?」
二人は顔を見合わせて微妙な表情を作るが、なんじゃ?
「誕生なら死んだが」
「嘘じゃろ?」
「ほんとだよ、なんか爆発した」
肉片と焦げの匂いのした三階を思い出す。
「ふ……」
女がわしの顔を覗き込んでギョッとする。
「ふぇぇぇぇぇん!(泣)」




