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電話の話(青井ノ影打)
「正気じゃねーよ」
朱手解体は言う。
「殺し屋一人に一億賭けて廢縞十鬼に殊更切味だぜ? 機時惨告は頭が悪いか馬鹿か頭が悪いかのどれかだね」
「朱手の偽物程度では手に負えないか?」
「当たり前だろ、俺はハッタリとハッタリとハッタリでこの世界を生き延びて来たんだ。俺が全然まったく完全に大したやつでないことを隠し通しながらな」
「……機時の居場所の情報は?」
「いまのとこ91916526から動いてないぜ」
朱手解体の言った数字は町を将棋盤に見立てたモノだ。
町を9×9マスに分けその1マスをまた9×9マスに分ける。四回も繰り返せばそこそこ狭い範囲に絞られる。
青井は地図を広げた。
「91916526…… やはり中小企業の事務所となっているな」
「もう俺を巻き込まないでくれよ? 俺はもうこの件からは離れて逃げて遠ざかるから」
「ああ、わかっている」
本心だった。
どうせ電話越しの相手と次に会うことはないだろう。
向こうで鍔鳴りがした。




