34/195
皮肉の話
「……なんだよ、気持ちわりぃな」
俺が言うと青井は肩を竦めた。それから翻って跳躍。テーブルを飛び越して着地する。そこそこ高い跳躍だったが足音がまったくしない。身のこなしだけなら廢縞十鬼並みかもしれない。
『拷問屋』は依頼人が連れてきた人間をただ拷問するときもあれば自前で依頼された人間を捕獲するときもある。前者しか行わない拷問屋は多いが青井は後者も行うことで有名だ。
拘束術のスペシャリストってとこか。
「……」
青井がドアに手を掛ける。
「どこへ行く?」
「感謝しろ、お前の依頼を受けてやる」
「……まだ依頼内容も喋ってないんだが」
「大方『機時惨告の居所について』とか、そんなところだろう」 俺は舌打ちを一つした。
その通りだった。
「ちなみにどういう心境の変化だ?」
「たしか先代の口癖も『死ね』だったと思ってな。ふと懐かしんでみただけのことだ」
青井が出ていく。
「……野郎」
言葉がただ突き刺さった。
ったく、最悪の皮肉だ。




