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頭痛の話
「あんた、先代の弟子か?」
男は頷く。
「たしかお前が十の時に一度だけ会ったことがあるはずだ」
言われてみれば聞き覚えのある声をしている。
あれ? 十の時って言えば……
「自己紹介がまだだったか。いまは別の流れを汲んで青井ノ影打を名乗っている」
「青井だと」
「『拷問屋』をしている。名の知れたほうか?」
頭痛。
同時にトラウマが再生される。
抉られて、掻き回されて、剥がされて、壊された、
あの表情、悲鳴、目撃を強制される俺。
赤が迸る。
「いま俺を殺せば機時は殺せないぞ」
気がつけば俺の左手はジーンズに仕込んだ『芯』を掴んでいた。
「別の機会を待つさ」
「なるほど、だがこれだけ近距離で俺がお前に対して何の手も打たなかったと思っているのか」
左手はそれ以上動かなかった。
よく見ると『定規』とは違う種類、おそらく拘束用の糸が絡めとっていた。
「……すまん、冗談だ」
「だろうと思っていた」
青井は十三階の部屋に入って俺をベッドに降ろした。




