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逃走の話
距離はおおよそ六歩から七歩。
呼吸音やら挙動から割り出したとしても見えてない相手のそこまでわかるか?!
「もしかして、」
俺はシキを抱えて走り出した。
「君が『愛川』なのかな?」
ダンッ!
廢縞十鬼の踏み込んだらしい最初の一歩が舗装されたアスファルトを鳴らす。俺は次の角を右に曲がりながら首だけでそっちを見た。
はえぇ、自転車も真っ青だ。ウサイン・ボルトかよあいつは!
「っ……、」
次の角までは短いがスピードに差がある以上逃走は意味を持たない。迎え撃つしかない。超恐い。俺はシキを塀の向こう側に放り投げた。足手まといだ。
塀に背を預けて廢縞十鬼のほうを向く。一連の挙動を終えてから一瞬遅れて廢縞十鬼がこちらに現れる。
「確認するけど君が愛川かな?」
「ゼンゼンチガウヨ、ソレダァレ?」
「気配が変わったね、戦闘モードってところか」
聞いちゃいねぇ……
廢縞十鬼はジャケットの裏からナイフを二本引き抜いた。
俺は『鉛筆』を握り込む。




