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正義の話
俺は依頼を受けるときに必ず依頼人の話を聞くようにしている。
大抵の場合は捏造や誇張表現を交えた妄想に近い話になるのだが、俺はそれを一字一句聞き逃さない。
別に大した意味はない。
あえて言うならばテンションが上がるからだろうと俺自身は思う。
俺が殺そうとしているやつが偉大なるクソヤロウであると思い込むことで俺は殺意を高める。
実際には殺される側より殺す側のほうがクソヤロウだったりする。
俺がやってるのはまるで自分を正義の使者にするような、
躊躇いを打ち消すためのこの世で一番くだらない儀式。
気分は勧善懲悪の物語の主人公。
苦しむ人達を救うために立ち上がった無二のヒーローだ。
そして俺は殺し屋、愛川 誕生になる。
もちろん偽名だ。
殺し屋のクセに誕生を名乗るとは、これ如何に?
あ そうそう。
依頼人は金の支払いを渋った。
だから彼女にも死んでもらうことにしよう。
約束を破るのは悪いことだ。
ビバ、勧善懲悪!
あれ 人殺しって悪いっけ?




