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防弾の話
姉ちゃんの手を掴んで引き摺るようにして車に乗り込む。殊更さんがアクセルを踏む。がごんと嫌な音がして、窓が白くなった。
「大丈夫、防弾ガラスだにゃ。タイヤも防弾仕様だから心配しなくていい、にゃっ?!」
車が揺れた。たぶんライフル弾がタイヤに当たったのだろう。タイヤ自体は平気でも衝撃が突き抜けた。僕は揺れる車の中で上着を脱いで姉ちゃんの足を止血する。
「しかし妙なところで会うにゃあ。愛川既死期」
「あんたねえ……」
悪態をつこうとした姉ちゃんが足の痛みに呻く。額に脂汗が浮かんでいる。
「殊更さん、病院向かって貰えますか?」
「無理だにゃ。東条の一派の手が回ってるだろうから、油田五忌振の中の医者に見てもらうしかないんだが」
「あんたらのなかの医者なんて死んでもごめんだわ」
「このとおりだにゃあ」
「油田五忌振の医者のところへお願いします」
殊更さんが面倒そうに顔を顰める。
「助けてやっただけでもありがたいと思えにゃあ」




