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暴力の話
草原獅四吼は六本のナイフを両手で掴んで止めた。半身立ちの体を完全に縦にしてナイフの軌道に対して体の表面積を最も小さくする。あまりにも膨大な数に回避が不可能なため、完全に防ぐことは不可能だった。傷は三箇所ある。側頭部を一つが掠め、二つ目は右足の脛の骨を浅く削っている。三つ目が致命的で腕の基点となる肩に深く突き刺さっていた。
「ごみはごみらしく地べたに這いつくばっとけばあ?」
姉ちゃんがこんな声をだすことを僕は知らなかった。
ひどく暴力的で、どこか艶がある。
戦いの女神みたいなのがいたら姉ちゃんみたいな声をだすのかもしれない。
姉ちゃんがトドメを刺そうと動いた刹那、すごくスピードでワゴン車が一台飛び込んできた。ほとんど横滑りになって止まる。「乗るにゃ!」ドアを開けた殊更さんが叫ぶ。一拍遅れて姉ちゃんの足から血が霧のように舞った。たぶんライフルだった。頭を狙えない位置だったのだろう。
「っ……」
僕は駆け出す。




