182/195
私刑の話
僕は長い息を吐いた。真理はもうぴくりとも動かない。死んだ。胃袋から肺の内まで油を詰め込んで死んだ。ユキやユウを焼いたのと同じ油で死んだ。彼女にふさわしい死に方だ。壮絶な表情が、苦しみを悠然と語っている。ああ、僕は人間でも殺せるんだな。姉ちゃんや、切味ちゃんと同じように。
「う、……くっ」
濃い油と吐瀉物の入り混じった匂いで僕は噎せかえりそうになった。無理矢理飲み込む。涙が出そうなのはきっと灯油が染みるせいだ。僕は部屋から出て扉を閉じた。部屋の景色が消え、灯油の匂いが消え、真理の死体が消える。最後にさっきまでここにいたはずの僕がいなくなった。そして人を殺せる僕がここに残っていた。
立っていられずに壁に背をつける。目を閉じると母さんが困っていた。幼い僕をどう叱りつけていいのかわからないみたいだ。僕は彼らに微笑んで見せる。
ごめんなさい。
誰に対しての謝罪かはよくわからなかったけれど自然と口をついて出た。




