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罪悪の話
僕は悪くない。悪いのはあいつらだ。
違う。
僕は今まで僕が悪であることを自覚していた。それでも殺せと意識の底で叫ぶんだ。それはユキやユウや、母さんの声だったかもしれない。
違う。
叫んでいたのは僕自身だ。僕が家族を失って辛かったから、嫌だったから、あいつらを殺したかったんだ。
じゃあ真理は? 真理は事件のとき灯油を運んできただけだ。ユキを殺していない。殺していない? じゃあ中西や池谷や皆木の家族だって、ユキを殺していない。
違う。
もう考えるな。
椅子の上に倒れるように腰を落とす。自分の手が真っ赤だった。炎と血の色だ。僕はそれを容認してきた。大丈夫。僕はまだ殺せるはず。
水を飲んだ。
ああ、僕はいままでずっと怒っていたのだ。八年間も怒り続けて、元々の自分がわからなくなっていた。怒ってない僕に人は殺せない。真理がゴミではなくなって気づいて、少しだけ自分が帰ってきた。ただそれだけのことだった。
洗面所に行き、顔を洗う。




