175/195
灯油の話
なにか言いたそうにしていたのでキャグをとってやった。
「ふざんけんじゃないわよなんなのよあなたじぶんがなにやってるのかわかってるの」
五月蠅かったので股を蹴った。「うえ」呻いて、唾を垂らして僕を睨みつける。
「……笠原くん?」
「なんだ。いまごろ気づいたのか」
僕は近くの椅子を彼女の斜め前に持って来て腰を降ろした。
「え? じゃあ中西と池谷を殺したのも?」
「うん。僕。君を殺してないのはただの気紛れだ。たぶんこれから死ぬより辛い目に遭うから舌とか噛んで死ぬなら早めにしたほうがいいよ」
「なんでこんなことするの?」
「したいからだよ」
「あの火事のこと? だったらあたし関係ないでしょ」
「へー。そーなんだ」
「あたし灯油持ってきただけなんだよ。家にあったストーブ用の。中西に命令されて。わかるでしょ? 断れなかったの」
「へー。そーなんだ」
僕は伸ばした足を上げた。足の間を伝わせる。
真理が痛みに顔を顰める。
「僕には関係ないね」




