170/195
痕跡の話
ちょっと署までお願いできませんか? 車に乗せられて、数分してから突然言われた。断ることはできなさそうだった。すでに僕の住んでいる学生寮の方面ではなく、最寄の警察署の方に車を進めている。勘弁してくださいよ、僕、レポートあるんですよ。言ったけれど、無視された。大きくため息をつく。
「ところでですねえ中西さんの事、件の被害者にはレイプされた痕跡があるんですよ」
さもおもしろそうに言う。
僕は彼女が嫌いだとはっきり思った。
「嫌な犯人ですね。死ねばいいのに」
顔を顰めて僕は言った。
本心だ。
女を無理矢理犯して喜んでいる人間は等しく死ねばいいと思う。
死なないけど。
「だけどねえこの事件の犯人ゴ、ムしてるんですよねえ」
「ゴム?」
「コン、ドームです。レイプ犯のく、せになんでだと思います?」
「わかりません。どうしてですか?」
またまたわかってるくせにぃ?
そう言いたげに彼女は僕を見た。
なんだかひどく楽しそうな顔つきに見えた。




