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騒動の話(中西勇太)
人が俺の脇を駆け抜けていった。一人ではなかった。なにかあったのだろうか。俺は少し足を早めて、曲がり角の奥が明るくなっていることに気づく。火災だった。家のすぐ近くの場所で起こったらしい。
まさか……?
弾かれたように俺は駆け出していた。
曲がり角一つ先のそれは、俺の家が全焼している光景だった。赤くなって黒くなって、ぼろぼろになっていく。集まっている野次馬の中に両親と妹の姿を探す。人波を掻き分ける。
「母さん! シホ!」
返事の代わりに周囲がざわめくだけだった。消防車はまだ着いていない。火が消える気配はしばらくない。どこかに避難しているだけだ。そう信じようとしていた。視界が急に低くなった。足に力が入らなくて、膝から崩れたんだ。
――僕と同じ状況になった気分はどうですか。
耳元で聴こえた気がしたが、振り返っても野次馬が騒いでいるだけだ。首のあたりに手をやると、ボイスレコーダーがクリップで俺の服に止められていた。




