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実行の話
電車やタクシーを使えば記録が残るので、移動には殊更さんが用意してくれたバイクを使った。中西の住所までは一時間半ほどかかった。中西の家族も引越しをしていた。きっと電話やメールで多数の抗議を受けたのだろう。嫌がらせとしか思えないくらいに。
カーテンが閉まっている。表札を確かめ、住所を確認したので、公園の公衆トイレで運送屋の制服に着替える。くくったバックから運送物に偽装した必要なものを取り出す。ポケットにスタンガンを忍ばせる。準備はできた。
僕はいまからやろうとしていることにもっと自分の心が揺れるかと思っていたが、至って平静だった。バスケットの試合前のほうが緊張する。自然に笑みがこぼれた。僕はこの状況を楽しんでいる。
僕は晴れやかな気持ちでバイクを中西の家の前に停め、インターフォンを押した。「はい?」マイクから女の人の明るい声がする。「運送屋です」僕は言った。
「あ、いま出ます」
鍵が外れて、ドアが開く。




