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開幕の話
大学生になって僕は少々フライングをした。
「もしもし」
「にゃあ? この番号知ってるやついないはずにゃんだけど?」
「二十代後半でまだにゃあにゃあ言ってるんですね。恥ずかしくないんですか? 殊更切無さん」
「聞いた声だにゃん。ちょっと待って。いま思い出すから」
「無理だと思うんでいいですよ。愛川一志といいます。前は笠原一志でした」
「笠原くんね! 覚えてたよ。んで、にゃんかよう?」
「絶対覚えてないでしょ」
「うん、ごめん」
「しょうもない演技のほうがムカつきます。八年前に家族を殺されてあなたを頼りました。手伝って貰えますか」
「うんうん、で、なにを手伝えばいいのかな?」
「殺します」
「あいよ。中西勇太、池谷正也、土屋弘、皆木あかり、明石真理。の五人の殺人のコーディネートね。請け負ったにゃ」
「殊更さん?」
「主犯がそろそろ出てくるころだにゃん。ちょうどいいにゃあ」
電話越しに冷たい笑い声がする。
頼もしいな、と僕は思った。




