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平和の話
そして僕は転校した。地元を離れたほうがいいと言ったのは、やっぱり姉ちゃんだった。姉ちゃんはときどき僕のことを覗きにきてはくれたけれど、基本的には僕は一人で暮らしていた。孤児院で家事の手伝いをやっていたのがこんな形で生きるとは思ってなかった。母さんが「カズは上手に作るね。助かるよ」と言っていたのを思い出して少し泣く。
学校は平和で何も問題はなかった。クラスメイトともすぐに打ち解けることができた。誰も僕が事件の関係者だとは知らなかったし、前の学校のように特定の誰かを不特定多数の誰かが攻撃することもなかった。
姉ちゃんに人の殺し方を教えてくれと言ったことがある。姉ちゃんは変な顔をしたあと、僕をぎゅっと抱きしめて泣いた。それから二度とそんなことを言わないようにして欲しいと言った。僕は頷いたが、諦めたわけではなかった。
小学六年生の一年間を、僕は平和でおだやかに過ごした。
けれどそれでも殺したいままだった。




