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泣声の話
姉ちゃんが落としたのは刃物だった。刃渡り六センチは超えている。ははっ。銃刀法違反だ。えっと、なんだ? なんで姉ちゃんがナイフなんか持ってるんだ。
「カズ? あの入っていい?」
「あ、うん」
姉ちゃんがカーテンを捲る。赤い目が僕をみる。泣きそうだった。僕は笑ってみせたけれど、それはきっとぎこちなく見えただろう。急に刃物を取り出した姉ちゃんが恐かった。
「見た……?」
「なにを?」
精一杯とぼけてみせる。けれど誤魔化せなかった。気丈な姉ちゃんの顔が童女のように歪んでいく。なにか言わなければと思った。僕は最悪の言葉を選んでしまった。
「あの、ユキとユウは? それから母さんも無事? 怪我はしてる?」
姉ちゃんは答えなかった。代わりに泣いた。漫画かなにかみたいな量の涙目を流してうわああんわああんと声をあげて泣いた。
「姉ちゃん? ユウたちになにがあったの……?」
泣きじゃくりながら姉ちゃんは言った。
「みんな、みんな死んじゃった」




