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プロローグ:死刑の話
死んでいた。僕を構成していた八割五分の価値が炎に呑まれて行く。シチューの鍋が溶けて流れ出し、火をオレンジ色にキラキラと輝かせていた。こんなにも絶望的な光景なのにそれが明るくきれいなのがなんだかとても可笑しかった。ユキやユウは無事だろうか。きっと母さんか姉ちゃんが連れ出しているはずだ。取り残されるのが僕だけならいい。
きっとこれをやったのは、ユキをいじめていたやつらだ。僕が焼け死ねばきっと彼らは自分のやったことの大きさに気づく。例え気づかなくても警察に捕まればユキは彼ら彼女らから解放される。これでユキが助かるなら大丈夫だ。いま僕が少し暑いことくらい我慢できる。殺されることで僕はあいつらを殺すのだ。
死ねしねしねしねしね煙を吸い込んだかもしれないしねしねしねしね意識が遠のいてくるしねしねしねしね扉が開いたのが薄目に見えたしねしねしねしね来ちゃダメだよ姉ちゃんしねしねしね目の前が真っ暗になった死ね。




