エピローグ:とある日の笠原幸子
私は目を覚ました。体は動かない。紐か何かで手足を縛られてるんだと思う。何かを噛まされているみたいで舌が動かなかった。目も見えない。目隠しなのかな? 薄い光が布を突き抜けてくる。でも周りも暗いみたいだ。夜? 懐中電灯? なんだったっけ? わたし何してたんだっけ?
びちゃびちゃと液体が撥ねる音が聞こえる。独特の匂い。冬に嗅いだ匂いだ。ああ、ユウが陣取っていつも母さんに怒られていた。これ、ストーブの匂いだ。液体が服に染みてきて気持ち悪い。頭がくらくらする。やだな。
シュっと何かが擦れる音がした。布を抜ける光が大きくなる。
「ほ、ほんとにやるの……?」
「え? なんでやらないの? 臭いじゃん。はやくやろうよ」
同じクラスの男の子の声がした。
それから。肌が急に熱くなった。ものっすごく熱い。火にかけた薬缶に触ってしまったときの十倍くらい熱かった。
「んー! んー!」
熱い苦しい痛い辛い恐い怖いこわい助けてユウカズ姉ちゃんわたしまだ十代でこれからまだまだ楽しいことあるはずでいまは我慢しててなのにもう終わりとか嫌だよなんでこんなことになったのお父さんお母さん天国からわたし守ってがんばったよ二人とも死んじゃってから車で海に飛び込んじゃってから挫けそうになったし寂しかったけどわたしがんばってたんだよ嫌なこといっぱいあったけど楽しいって思えてきたんだよなのにわたしまだ死にたくないよユウ好きだよだから助けて死にたくない死にたくない。




