エピローグ:とある日の朱手解体
「いやいや本当に驚いたよ。いくら僕の調子が悪いからってあこんなにあっさり負けると思わなかったもんでねあ。名前なんだったっけ? 朱手解体? ああ、さっきからずぶずぶ他人の内臓に手を突っ込んで真っ赤に染まってるのが渾名の由来かい?あ。それにしても悪食ってよくないんだねえあっ。クロイツフェルトヤコブ病って知ってる? 知らないよねあっ君インテリじゃなさそうだもんね。じゃあこっちは知ってるだろあ。牛海綿状脳症。BSEって言ったほうが、あぐっ……、馴染みあるかな? 狂牛病のことだ、よ。症状はね、脳みそがすかすかになるらしい。こいつはブリオンとかいうやつの異常で発症するらしいんだあ、あ…ぃ……。経口摂取でも発症するらしくて異常のあるプリオンを食ったら感染することがあるんだよ。プリオンってなんか間抜けな響きだよね。言い訳するわけじゃないんだけど、まだもうちょっと体動くと思っ、……てたんだけどねえ。
ところで君はどうして解体するんだい? ボクは『捕食者』だ。人肉が主食でね。ああ、もちろん骨や脳味噌もちゃんと食べるよ。けれどボクには君が同類には見えな、ぃ」
「他人が痛いのが大好きなんだ」
「イヤなやつだな君は! ボクも大概だと思っていたが君ほどじゃないぞ! もっと人命を大事にしてやりたまえよ。僕は殺すときはちゃんと一発で殺すぞ!」
「一つ訊いていいか?」
「ん? なんだい?」
「お前、ここまで“分けられて”なんで生きてるんだ?」




