再死の話 再誕の話
「おい、聞こえてるのか?」
聞こえてる。
最初から言ってるだろ。俺が欲しいのは愛川本家の名前だけ。でもお前を殺ったあとに殊更切味に殺されちゃ意味がない。だから先に殊更切味を殺そうと思った。お前に近づいた理由はそれだけ。オーケー? ちゃっちいオツムで理解できたか?
って言ってたんだっけ。
「よし、じゃあ殺りあおうか。愛川の名前を賭けて、正々堂々真正面から殺し合おうぜ」
無手で死出くんは構えた。
「んーと、その前に、っと」
美咲の頭にナイフを投げた。
「お前、うるせぇ」
何か喚いていた美咲が倒れる。成木の死体と重なるように。
……何かが砕けた音がした。
倫理とか道徳とかそんな感じの物だったかもしれない。
切味が死んでる。
成木が死んでる。
美咲が死んでる。
黄色が死んだ。
「ああ、わかったよ」
誕生はきっとこんな気分だったんだろうな。愛川静誕さんがなぶられて殺されてからずっと。復讐なんてバカらしいと思ってたけど,
今ならわかる。
ああ、あいつを殺したい。
「……お前さ、何か足りないと思ってたんだが、出せるじゃねぇか。殺気」
私は動く。死出くんが黒いナイフを突き出す。スゲーゆっくりだ。楽勝でかわせる。肘と膝で伸びた腕を挟んで折った。少し足を引いた。保護色のナイフが全部浮かんで見える。それを避けて鳩尾を蹴った。たたらを踏んだ死出くんが嘔吐する。私は黒いナイフを指先で投げた。ガリ、と死出くんの頭蓋骨を掠めて落ちる。刺さるはずだったのに色を塗った刃は切れ味が少し落ちてるみたいだ。コンバットナイフを構える。死出くんが向かってくる。だからなんであんたそんなにゆっくりなのさ? 殺してくれって言わんばかりじゃない。
私は横薙ぎに振るわれたナイフを足で止めて死出くんの脳天にコンバットナイフを突き刺した。死出くんは二、三歩よろけると突然仰向けに倒れた。死んだのだろうか? うわ、弱い。超拍子抜けだ。
私は笑った。
勝利と殺人の感触が気持ちよくて笑った。




