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黄色の話
断っておくが俺は何の目算もなくこの子を連れ帰った訳じゃない。
少なくとも俺の住居不法侵入その他諸々を目撃しているし、この子は片親。発見は遅れる。警察とお友達になりたくない俺に取って例え一定の期間にすぎなくても証拠隠滅はわりと大事なことだ。時間が消してくれる証拠は多い。
それに俺はこの子の五年後に期待している。……エロい意味じゃねーぞ? 俺の仕事が半分になるかもってことだ。
それにまあ……、
依頼人に話を訊いたとき父親がいかにどーしよーもない男だったかを長々と聞かされた。祖父母も既に亡くなっている。
かわいそうだったからとかではない。
俺が孤児だったこととも関係がない。
断じて、違う。関連が絶無。
「ね」
「なんだ」
「あなたのお名前は?」
「愛川誕生」
「たんじょー?」
「そ、誕生日のたんじょうと同じ字だ」
「たんじょう」
「お前の名前は?」
「きしきだよ、黄色って書くんだ」
なるほど既死期か、と俺はほとんど無意識に思った。




