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第十二話 趙雲子龍(ちょうんしりゅう)

洛陽の空は、血のように濁っていた。

曹操の檄――

それは、ただの呼びかけではない。

一つの時代の、幕開けだった。

 そして、乱世の歯車は動き出す。


 各地の群雄が立ち上がり、曹操、袁紹、公孫瓚、孫堅、そして袁術がそれぞれに旗を掲げる。


 洛陽では、王允が密かに策を巡らせ、董卓に対抗すべく機を伺っていた。


 天子の座が、董卓の手に落ちたその日から、天下は炎の中にあった。


 だがその中に、光を掲げて立ち上がる者たちがいる限り、希望は決して尽きぬ。


 これは、やがて三国の時代へと至る、混迷の中に生きた者たちの、始まりであった。


―幽州

場所は変わって幽州

剣人、こと孫剣と京子は、孫堅の孫諜報そんちょうほうとして、公孫瓚のもとにきていた。長旅であった。


「京子、そのリュックの中、スカウター入っているか?Ywatchは身に付けてるからOKとして・・・」

「あたりまえでしょ、あんたも、有道みたいに、常日頃からつけてなさいよ。もうすぐ公孫瓚の宮殿よ!」


 ―北の要塞、易京城・白馬の城―


冷たい風が、北の大地を駆け抜けていた。


河北の最北、黄土と白雪の交わるその地にそびえるのは、堅牢無比の要塞――易京城。厚い城壁は鉄と石で築かれ、四方にそびえる櫓からは、常に白馬義従の旗がはためいている。まさに“白馬将軍”公孫瓚こうそんさんの威光を体現するかのような、鉄壁の城だった。


「……あれが、易京……」


丘の上から城を見下ろしながら、孫剣は息をのんだ。


「立派……まるで、現代の要塞みたい」


隣で呟いたのは、京子だった。風に揺れる長髪を手で押さえながら、彼女は冷えた空気に頬を赤らめていた。


二人は、孫諜報の密命を受け、はるばる南方の孫堅陣営から北上してきた。董卓軍の圧政を討つため、公孫瓚と事前に連携し、今後の同盟を結ぶ方向で――それが今回の任務だった。


城門の前で馬を止めると、すぐさま衛兵たちが囲む。


「名を名乗れ!」


「我が名は孫剣。孫堅将軍の命を受け、公孫将軍に面会を求めに参上した!」


名を告げると、衛兵の中の一人が、目を見開いた。


「その剣……南斗聖剣か……! 将軍に通す!」


ほどなくして、彼らは城の中枢へと案内された。堂内は質素でありながら、武骨な美しさを感じさせる。白馬義従の鎧が並び、軍議の地図には北辺を守るための策が書き込まれている。


そして、中央にいた青年が一人、孫剣と京子に近づいてきた。


「貴殿が……孫剣殿か?」


その青年は、漆黒の鎧を纏い、背には長槍。眉目秀麗、鋭い眼光の中にも静かな気品を湛えていた。


「趙雲……子龍と申す。将軍の命で、客人の迎えに参った」


孫剣はその名を聞き、驚きを隠せなかった。後に三国志の名将として名を馳せる男との、歴史を超えた邂逅――。


【スカウター画面】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


趙雲子龍ちょうんしりゅう

武力:99 知力:98 政治:82 魅力:90 体力:96 統率:99

※【人物像】


趙雲は、**三国志における“忠義の化身”**とも呼ばれる名将で、冷静沈着、武勇と知略の両面に秀でた人物です。

※ 仁義を重んじる性格

ただの猛将ではなく、敵の降将を無闇に殺さず、仁愛を持って人心を掌握しました。軍紀も厳格に守り、略奪をしないことで農民からも尊敬されたといいます。

※ 美男子としても名高い

『三国志演義』では特に、美男子で冷静沈着、女性にも人気のある将軍として描かれています。白銀の甲冑に身を包み、白馬に乗る姿は「白馬長槍、風の如し」と称されました。


「あなたが……趙雲、子龍……!」


「今はただの白馬義従の一兵。だが、いずれ忠義を貫き通す槍の道を歩むつもりだ」


趙雲は静かにそう告げ、二人を城の奥へと案内した。


その歩みの先に、北の戦火をくぐり抜けた者たちが集う“真の戦場”が広がっていることを、孫剣と京子はまだ知らなかった。


――北風は、次なる戦の鼓動を、鋭く伝えていた。

城郭の奥深く、風を遮る厚き石の回廊を抜けた先に、広々とした謁見の間があった。


その中央、白地に黒の文様が施された軍服を纏う壮年の男が、鋭い眼光で孫剣と京子を見据えていた。背後には一対の白馬義従の旗。鋼の如き威容と、北辺を駆け抜けてきた老練な戦士の気迫が空間を支配していた。


「貴殿が、孫堅どのの密使、孫剣殿であるか?」


堂々たる声。その男こそが、公孫瓚――北方を統べる将軍であり、白馬将軍と謳われる英雄だった。


「はい。南方の孫堅将軍より、董卓打倒のための盟を結びたく、使いとしてこの地に参りました」


孫剣は膝を折り、礼を取った。京子もそれに倣う。


公孫瓚は一瞬、二人を吟味するように黙したが、やがてわずかに口元を綻ばせた。


「孫堅殿の子らは、皆骨があると聞いていたが……ふむ、まさか少年と少女が来ようとは。しかし、その目の奥には炎がある。何より――その剣。伝説の南斗聖剣、確かに私の目は誤っておらぬな」


「……よく見抜かれました」


「信じよう。北の地にも盟を求める気概があるならば、我ら白馬義従とともに戦え」


そう言って、公孫瓚は右手を差し出した。


「共に、漢の地を取り戻そうではないか」


孫剣はその手をしっかりと握った。


翌日、趙雲が稽古場に孫剣を招いた。空気は冷たいが、地は凍りつくことなく、武の者たちの叫びが朝靄にこだましていた。


「南斗聖剣……見せてもらいたい。あなたがこの地に戦の風を呼ぶ力があるか、確かめさせてほしい」


「……いいだろう。だが、あなたの槍もまた、歴史に名を刻む者のものだ。手加減は無用だ」


二人は無言で構えた。趙雲の槍は水を切るごとく滑らかに、だが一撃ごとに山をも穿つような重みがあった。


孫剣はそれを受け流しながら、一瞬の隙を突いて剣を閃かせる。


斬、突き、跳躍。


斬撃の軌道を読ませず、趙雲の突きを紙一重で避け、カウンターの蹴りを放つ。


「見事!」


趙雲が声をあげる。額に汗を浮かべながら、しかしその瞳は戦いを楽しんでいた。


数刻の稽古の後、二人は笑い合い、槍と剣を下ろした。


「強い。……だが、互いに未熟だ」


「まだまだ高みを目指せる、ということですね」


「その通り。ともに戦えば、我らは最強の一対となろう」


そう言った趙雲の手を、孫剣は迷いなく握り返した。


そして数日後――。


易京城の北門に、黒煙が上がった。烏桓うがんと名乗る異民族の騎馬軍団が、冬の隙を突いて城下を襲撃してきたのである。


「このままでは城が包囲される!迎撃せねば、包囲戦になる!」


公孫瓚の号令で、城の精鋭――白馬義従が出陣する。孫剣、趙雲、が続いた。


「孫剣!奴らの右翼を突け!」


「任せてください!」


孫剣は白馬を駆け、突風のように戦場を走った。南斗聖剣が弧を描き、烏桓の騎兵を次々に斬り伏せる。


一方、趙雲は中央を突撃。槍を振るい、敵の指揮官に迫る。


「我が名は趙子龍!白馬義従、ここにあり!」


その雄叫びに、一瞬敵軍が怯んだ。


孫剣と趙雲、両翼からの挟撃が決まり、烏桓軍は乱れ始める。


「今だ、総攻撃!」


公孫瓚の指揮のもと、義従たちが突撃し、ついに敵軍は潰走した。


戦場に残されたのは、白馬の足跡と、剣と槍が交わした友情の証だった。


夕暮れ、勝利の凱旋が始まった。


京子は、遠くから孫剣の姿を見つけ、ほっと胸をなでおろす。防寒装備のコートに包まりながら、彼女は言った。


「……戦い、お疲れ様。これから、本当に大きな戦いが始まるのね」


「うん。だけど、一人じゃない。仲間がいる。……京子、お前も、いてくれる」


「もちろん。いつだって、そばにいる」


孫剣と京子は、雪の舞う北風の中、静かに手を重ねた。


その背後で、公孫瓚と趙雲が二人の姿を見ていた。


「若い者の力、未来の風かもしれんな、我々も、洛陽で、孫堅軍と合流しよう」


「ええ、将軍。董卓・呂布の軍を、彼らと一緒であれば倒せるかもしれません」


北国の夜空には、星々が静かにきらめいていた――。

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