5話・魔王、異世界人と判明する
血液検査が終わると自称魔王なるシエラは俺を鋭い目つきでガン見してきた。
採血の時に取り押さえられたのを相当根に持ってるらしい。
「おおコーヘイ。 後で酷いからな」
「だーから血液型見ないとお前の身元調べられないって言ってるだろ?」
こっちが正論を述べるとシエラは「ぐぬぬ」となにも言えなそうな顔をしていた。
そもそも押さえていたのは陽菜乃もだろということを述べると魔王曰く「可愛いから許す」だとか。 り、理不尽。
まぁこいつが自分の血液型わかってればこんなめんどうごと起こらずに済むのだが……などと考えてると仏頂面のじーちゃんが検査室から出てきた。
「おぉじーちゃん。 結果どうだった?」
まぁこの自由奔放さや大雑把さからしてBかOじゃねぇのかな? なんて思っていたがじーちゃんの顔はなぜか「どういうことだ?」と言いたそうな表情を浮かべていた。
「どうだったおじいちゃん。 この子の大らかさからしたらO型かな?」
俺と同じくまだなにも知らない陽菜乃がニッコニコとした表情で尋ねるも返ってきた答えに俺達兄妹は理解が追いつかなかった。
「ワシの見間違いかのぅ。 どういうわけかそのお嬢ちゃん、血液型がわからないんじゃよ」
「はい? じーちゃんなに言ってんだ?」
「ねぇおじいちゃん、もうボケ始めちゃったの?」
「やかましいっ」
俺達兄妹が半分いじるとじーちゃんは至極真面目な表情で話を続ける。
「わからない、というよりは合致しないんじゃ。 4つのどの血液型とも」
真剣な顔つきで喋るじーちゃんの顔を見て俺はシエラの言葉が頭をよぎる。
****我輩は第一20第魔王、シエラ・オルフェンシアじゃぞっ****
コイツ、まさか本当に……。
「ありがとうじーちゃん、大体知りたいことわかった。 ほら陽菜乃帰るぞ」
「あ、うん待ってっ」
これ以上長居すると面倒なことになると思い俺はシエラを引っ張りながら陽菜乃と共に家に帰った。
頭を整理しようとするも沈黙で逆に気が散る。 我慢の限界のため俺はポツリと一言呟く。
「お前、本当に異世界の種族だったんだな」
俺の言葉に更に沈黙が流れる。 直後、自称魔王様は「なに言っとるのじゃ?」と言わんばかりのキョトン顔で返事をする。
「だから言っとるじゃろう、我輩は魔王じゃと、今更理解したのか?」
「い、いやいやだって普通信じないだろ? 海で子供みたいなのを釣ってそいつが魔王をなのって本当に魔王なんてよ。 陽菜乃もそう思うだろ?」
必死に同意を乞うも陽菜乃は軽く引いてる様子の冷ややかな視線を飛ばしてきた。
「え、お兄ぃ本当に信じてなかったの? もっと信じる気持ちを持ったほうがいいよ?」
やめろ2人してそんな視線を送るのは、俺がイタい人みたいじゃないか。
まぁそれはそれとして……。
「もうすぐ父さんお母さん帰って来るけどマジでどうすんだよ? ちゃんと誠意見せないと許可もらえないぞ?」
もっとも、犬や猫はともかく人間の子どものお世話をするなんてどの国どの親も許可するわけないと思うが。
「と、とにかく一生懸命お願いしよう。 だからなにかあったらお兄ぃ代わりに怒られて?」
「をいっ!」
なんたる鬼畜な妹だ、などと考えていたら家の鍵がガチャリと開く音が響く。
「ただいまぁ、帰ったわよぉ」
母さんが帰って来た。 このトーンからして、機嫌いいな。
母さんの声を聞くなり陽菜乃がドアノブに手をかけようとするも俺はすかさず襟首を後ろから掴む。
「待った」
「んぎゃっ。 なにするのっ?」
「話すんなら父さんも揃ってからのほうがいい、今朝から緊張してたから帰る頃の状況によっては……だな」
「わ、わかった」
「な、なんの話じゃ? 我輩を置いてきぼりにしてなにが始まるんじゃ?」
シエラがうろたえるもそれから間もなく時計の針は夕方6時30を指していた。
両親揃うまで残り数十分。 さて、どうなることやら