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4話・魔王、血を抜かれる

 濱王町の診療所、敦田医院の待合所にて午後2時半俺と陽菜乃はシエラの両肩に手を添えながらじーちゃんが来るのを待っていた。

 もちろん血液検査を受ける当の本人は顔から血の気が引いている。


「なぁ、ほんとに血を抜くのか? 考え直さないか? 今からでも遅くはないぞ? 我輩の配下たちが怒りを露わにする前に……」


「血液型見ないとお前のことわからないでしょうが、観念しろ?」


 俺の答えに自称魔王は納得のいかない様子で聞いてきた。 なぜ血液検査なるものをするのか、そんなことを調べて一体何の得があるのかとか、おいおい、いくら小学生でもそれくらいわかるだろ……。


「陽菜乃、どうにも無知だがどう思うよ?」


「うーん、やっぱり王様は偉いから血液型なんて調べる必要性がないから知らないだけなんじゃないかな?    

 そうでなくても海外のほとんどの人なんて自分の血液型知らないって話だし」


 言うてもコイツ日本語喋ってるから日本人、海外の人とは違うんだって……っていうかこいつ日本人でいいんだよな? 紫の髪は地毛なのか?


「おい康平とかいう冴えない少年よ」


「青年だ、なんだガキンチョ」


「その黒い髪は地毛なのか?」


 は? なに言ってんだコイツ。 日本人の髪の地毛が黒か疑問に思うなんて世間知らずにも程があるだろ。

 あまりの質問に呆気に取られてしまった。


「いや、普通日本人は黒だろ? お前の両親もそうだろ?」


「我輩の親はどっちもこの髪色じゃ。 そもそも黒い髪は魔族と人間関係なく畏怖を象徴とする髪でそういう者は息を潜めて暮らしてると聞くが……。


「ふぅーん、シエラちゃんの世界ってあたし達の住むとことは違うんだね」


「いや、だから妹よっ、まぁいい、こいつの詳しいことは血液型さえわかれば今日は上出来かもな」


 そうこう考えてる内に診察室の扉が開き白衣の人物が現れる。 少々めんどくさがってる顔だが本来は休診だけに仕方がない。

 俺が軽く手を上げるとその人は愚痴るように返事をした。


「ようじーちゃん」


「はぁ、今日はゆっくり休んで野球を見るつもりだったんだがな。 その子の血をみりゃいいんか?

 んじゃさっさと済ますぞ。 わしゃ早く帰りたいんでな」


 あぁ、すまんよじーじ。 と心の中で懺悔していると陽菜乃がじーちゃんの腕に抱き着いてきた。

 こういう時だけは頑固者の気難しさも緩むから厳禁なものだ。


「お爺ちゃんごめんね、この子のことどうしても放っておけなかったの。 今度方揉んであげるから水に流して?」


「お、おう。 まぁ可愛い孫娘の言うことなら仕方がないな、はっはっは」


 じ、ジジーこの野郎、俺には普段そんな寛容さを見せないくせに……っとしょうもない殺意は消して診察室にみんなして入るとシエラをイスに座らせた。

 手を洗い、アルコールで消毒するとじーちゃんは右手に注射器を持つ。


「や、やはり考え直さないか? 我輩の血をとってもなんの得もないぞ?」


 シエラの御託にじーちゃんは淡々と返事をした。


「大人しくしていてくれ。 ワシもさっさと帰りたいんでな」


「な、待て、話せばわかる。 話せば……」


「大丈夫だよシエラちゃん、痛いのは一瞬だからね」


 おい妹よ、その励ましは恐怖を煽るだけだぞ……なんてツッコもうとする間に針は腕のナノ単位の距離まで近づく。 そして……。


「んぎゃああぁぁっ」


 自称魔王を豪語する少女の200デシベルはあろう声が診療所の遥か先まで響き渡った。

 とりあえず一言、魔王乙。

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