2話・魔王、取り調べを受ける
「なるほど、海で釣れた、ね」
ここは濱王町3丁目の交番でお巡りさんは困惑してる。
そりゃそうだ、頭からツノ生やして自称魔王の子供なんてコントみたいな状況が目の前で起こりゃ俺だって反応に困る。
「どうすりゃいいっすかねぇ」
俺も困って呟くもお巡りさんは渋い顔をしてる。
「と言ってもねぇ、僕もある程度の年数警察してるけどこんな生物見つけたことすらないよ」
「フンガーっ、この第20代魔王に向かってなんと言う言い草じゃあっ」
シエラなる少女は両腕を突き上げて憤慨するもあっさりスルーされる。
「なんとかなりそうにないですか?」
妹が自称魔王を抱き抱えたまま聞くがお巡りさんは首を横に振る。
「身分証もない以上戸籍もわからないんじゃね、力になれなくてごめんよ」
マジか、知ーらね。
「困ったね」
「とりあえず家帰るか……こいつどうする?」
釣り上げた以上自称魔王、それも子供だから気がかりだ。
施設で育てられるのかな? と疑問に思っていたら妹がとんでもないことを口にした。
「お兄なに言ってるの? 連れて帰るよ?」
「ハアっ!? お前なに犬や猫連れて帰るノリで言ってんの? 人間の子供だぞ?」
「だって可哀そうじゃないっ、それともお兄はこの子がここで野垂れ死んだり施設で不安な思いしても構わないって思う薄情な人なのっ?」
そ、そこまで強い剣幕で言わんでも……あーもうっ、どうにでもなれっ。
「わかったわかった、兄ちゃんの負けだ。 連れて帰るよ。
ただし父さんと母さんには正直に話すんだぞ?」
「う、わかった」
ひとまずしのぐことはできたけど、どうなることやら。
「おーい、なんの話じゃ? 我輩を置いて勝手に進めるでなーいっ」
まぁ保護者が見つかるかそうでなければ施設が引き取ってくれる。
この時まだ俺はそう思っていた。
このシエラという子のとんでもない事実が発覚するまでは……。