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1話・魔王釣れる。

濱王町沿岸。 今日は夏にちょうどいい快晴で気分もいい。

 釣り糸を垂らして魚を待つ中、妹がクラスメイトの話を始めた。


「こないだ授業始まるなり夏樹ったら筆箱から魚肉ソーセージ出して慌てちゃってて」


「マジでっ? それ相当なおっちょこさんだな。 でも嫌いじゃねぇわそういう子」


 と兄の愛想として言ってみたけど、なぜ筆箱にソーセージ入ってんの? 冷蔵庫から入れる画面とか想像できなくてツッコミどころ満載なんだけどっ。


「にしても陽菜、あの頃より明るくなったな」


「うーん、お兄のお陰じゃないかな? ママにもパパにも相談できない中あたしに親身になってくれたのお兄だけだったからね」


「ハハッ、役に立てたんなら良かったよ」


 まぁその相談内容も仲違いっていう些細なものだが当時としちゃ中2の人間関係はかなりメンタルに来る。

 些細だが些細じゃない、難しいものだ。


「にしてもあの時はビックリしたよ、ねだってきたゲームがどうぶつの街じゃなくてゼルブレイダーなんて。 おまえRPGやったことなかったろ?」


「あの頃は誰彼構わず薙ぎ払いたかったからね、若気の至りかな」


 おいおい、高1だって全然若いだろうに、ていうかサラッと物騒なこと言うのはやめなさい。 こういうとこは母さん似なのかな。


 陽菜の言葉を最後になにを言うでもなく、しばらくの間ウミネコの声だけが響いていた。


「うーん、釣れないなぁ。 いつもならヒラメ釣れるよね? あたしあのたんぱくな味好きなんだけどなぁ」


「こりゃ今日は収穫なしか? しゃーない、もう少し待ってダメならスタパ寄って帰るか?」


「いいの? やったっ。 あたし春のいちごフラペチーノ大好きなんだよね……待ってお兄、引いてる」


 やっと1匹か、まぁ夕飯の1品でもあるだけいいだろ、と思っていた時だった。


「待ってお兄、引き良すぎ、持ってかれるっ」


「大丈夫か陽菜っ」


 陽菜の腰に手を回す……くれぐれも卑猥な意味ではないので誤解はするな。


「頑張れ、こりゃ大物かもしれないぞっ」


「だね、こりゃちょっとしたマグロくらいあるんじゃ……」


 ありったけの力を振り絞り釣竿を上にあげ、そして……。


「うりゃあぁぁっ! 見てお兄、釣れた……え?」


「どうした陽菜……ん?」


 これには俺も陽菜もキツネにつままれる顔をするしかなかった。


「ねぇお兄。 これ、なに?」


 釣られて俺も聞き返してしまう。


「っていうかそれ、誰?」


 今俺達兄妹の目の前で言いえて奇妙とも珍妙とも表現しにくい光景が広がっている。


「なんていうかお兄、この状況ってアレだね」


「あれって、なんだよ」


「シュール」


 妹の言葉がストンと腑に落ちた。 小学6年くらいの少女、紫を基調といた奇抜な衣服、そしてなにより俺達が一番気になったものは頭に生えてるソレだったっ。


「っていうかこれ、ツノだよな?」


 そういいながら頭部の突起物に触れようとした瞬間ピクっと動いたと思ったのと同時にすごい速さで起き上がり後ずさりを始めた。


「ぬ、ぬうぅわああぁぁぁぁっ!!」


 こちらを向いたまま絶叫しつつ後ろへ下がる少女……いつの時代のマンガだ。


「なんで海の中いたの? それになんで服こんなに変ちくりんなの……っていうかそのツノなに?」


 まとめて質問されたことに困惑してるのか、少女はワナワナと震え出したと思ったら大声で名乗りを上げた。


「この無礼もーーーーんっ!! ワシは第20第魔王、シエラ・オルフェンシアじゃぞっ!!」


 なにかと思いきや魔王ごっこして海に転落した子供か、さてどうするかねぇ。


「なぁ陽菜、この子どうする?」


「とりあえずお巡りさんに事情話そうか?」


 俺と妹の会話にシエラなる子供はポカンとしていた。


「オマワリサン?」


「よいしょ、陽菜、右脇持ってくれ」


「はいはい了解〜」


「ぬわっ、な、なんじゃ? なにをするっ、やめるのじゃあぁーー」


 俺が左脇を担ぎ妹が右脇を担ぐという、まるで宇宙人を連行するかのようにシエラなる自称魔王は付近の交番へ連れて行かれることとなった。


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