プロローグ・兄、妹を釣りへ誘う
「ただいま」
父さんと母さんは今日も残業か。 まぁ製造業と保険外交員じゃ当たり前っちゃ当たり前か。
「陽菜いるか? 夕飯買ってきたぞ」
「また出来合い? 先食べてて」
「一緒に食べよう」って言ってくれれば兄としては嬉しいんだけどな。 1人寂しく弁当でも食べるか。
本当なら作ってはやりたいが学校帰りで炊事は流石にダルい。
仕事から帰ってきてご飯や洗濯するとか主婦ってすごすぎだろ。
そうこうしてるうちに妹が降りてきた。 仲が良いわけじゃない兄の前でも腹が減りゃ姿は見せるか。
「あぁお腹空いたぁ。 え、お兄ご飯これだけ?」
地元の弁当屋のカルビ丼にサラダ、充分だと思うけどなぁ。
「あのな陽菜、これでも結構なボリュームだぞ? なんなら男の俺が満腹になるくらいだからな?」
「あたしは育ち盛りなのっ。 もう2品ないと足らないよ」
そういいながら空腹を正当化するといつか3段腹に……なんて言ったら鉄拳制裁されるから黙っておこう。
「なぁ陽菜、最近学校どうだ?」
「……それ言わないとダメ?」
「ダメじゃないけど、悩みがあれば兄としては話してほしい……」
沈黙、気まずいな。 こいつもこいつで思うとこはあるんだろうけど……そうだ。
「陽菜、明日予定あるか?」
「ないよ? でもなんで?」
「釣りいかないか? たまには新鮮な魚食べたくてね」
「うーん……いいよっ」
よし、兄妹の親睦もこれで深まるというものだ。
「代わりに今度リンテンドースウィッチ買って」
なっ、なんとがめつい……。
「わ、わかった。 可愛い妹の頼みだからな」
「よっしゃぁー」
とまぁこの件がきっかけで俺達吉田兄妹は仲が深まり且つ釣り好きになるのだが、後にハチャメチャな日常が俺達に振りかかってくる。
だって誰が想像できるよ? ある日釣りに出かけて釣れたのが魔王だなんてよっ。