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零顕ソウル  作者: 柳条湖
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第十四章 最強への挑戦

 風が薙いだ。

空を見ればその色はどこまでも青く澄み渡り、適度に浮かぶ雲には手を伸ばせば届きそうである。

観客達は未だに驚きから我に返って来ず、異様な静けさの中にある闘技場のフィールドの中心でソウルは零顕の感覚を脳内で反芻していた。


   「(何とも言えない、ってのはこれの事だな・・・)」


 零力を放出する指先から指の付け根、掌、下腕に上腕、肩、首、そして脳に至るまでの全ての反応経路に、まるでこの世には最初から何もなかったかのような欠落を感じる。

魔力を扱いやすい道具と例えるならば、零力はそれほど近しいわけではない知人。

そもそも比べる対象ですらない完全なる別物だ。

だから、まるで全くの赤の他人が体内を駆け回っている様な、一種嫌悪感の入り混じった奇妙な感覚がソウルを支配していた。


   「(残りは・・・約一秒・・・か・・・)」


 もともとフィルがソウルの体内に走らせた零力の量は連続で零顕を行使した場合におけるおよそ三秒分。

ソウルは零力の扱いその物はまだ習得していないから、解除を意識してから実際に解除されるまでに0.5秒ほどのタイムラグがある。

そして、二度の零顕の発動。

一度目は攻撃を防ぐためだけに一瞬だった物の、二度目は防いだ後大きく吹き飛ばすという動作を行った。

その零力の操作の方向性の調節にさらに0.5秒程使用している。

故にソウルが零力を解放し続けた時間は約二秒。

単純に言って、あと一回・・・上手く節約して、せいぜいが一瞬の発動をさらにもう一度が限界だ。


   「(その上で相手がこれでは・・・)」


 未だ敵の姿はフィールドにない。

しかし、扉の奥にある暗闇から漏れる研ぎ澄まされた殺気はひしひしと感じ、それが並大抵の敵などではない事を教えてくれる。

その相手はソウルには予想がついている。

先程フィルに顔を向けた時、隙を突くように観客席から消えて行った二人の人間の姿が目に入った。

つまりは、そういうことだ。


   「なぁソウルゥ。俺さぁ、俺の剣技を『魔麗の剣士』に見て貰って、その上で悪い所を指摘、指南して貰うのが夢だったんだよねぇ。」


 レイアーズが不意にそんな事をソウルに言った。

その体は小刻みに震えている。

待ち切れないと言った表情から察するに、武者震いであろう。

そう思うソウルの体もやや震えている事をソウルは自覚する。


   「「「「「オオォォォオオオオオ!!!!!」」」」」


 ふいに会場が爆発した。

先程までの異質の静けさなど全て忘れ去ったかのように、向かいの扉から出てきた二人の人物に観客達の視線は釘付けになる。


   「本日二度目。今回は自腹を切って1000ゼル。同じ賭け金なら大抵はやりたい相手と組ませてもらえるからな。」


 何かを言い訳する様にバルアはソウルに向かってそう言った。

いや、ソウルの目が一種の責めている様な目線だったのだろう。

気まずそうにバルアは頭を掻いた。


   「1000ゼルを超えるとな、そこからは魔法師が対戦相手に組み込まれるようになって来る。しかも闘技場に出て来る魔法師はかなり上位の実力を保有する場合が多い。単純に危ない。」


 ソウルがしかめっ面を解かないのを見て何を勘違いしたのか、バルアはそんな事を説明し出した。


   「それともう一つ、1000ゼルを超えると、俺やカイみたいな理不尽な強敵と組まされる事もある。俺達だったらまだ良いが、中には初めから殺すつもりの性質の悪い奴らもいるからな。」


 ナッハッハと困った様に笑いながらも、バルアだって叩きつけるようなぶ厚い闘気を一分も緩めてはいない。


   「ま、俺達が今こうして出てきたのは・・・」

   「力試しだ。」


 バルアの言葉の続きをカイが奪った。


   「それは、俺とレイアーズの力を見てくれると、そういう解釈で良いんですか?」

   「ま、そんなところだ。」


 そこまで言うとバルアは急に表情を真剣な物に変え、背中の巨剣に手を添える。


   「!!・・・両者離れてぇ!!構え!!!・・・始めぇぇえええ!!!!!」


 やがて審判が気付いた様に慌てて試合開始を告げる。

しかし、両者動かず。

ソウルとレイアーズは先のカイとバルアの試合で、自分達から仕掛けてもアッサリと返り打ちに遭うだけだという事が分かっているから手を出さない。

カイやバルアからしてみれば、こちらから動かずとも近付いて来る敵を斬り倒せば良いだけだから動く必要はない。

実力が拮抗せずとも睨みあいの拮抗状態に持ちこまれる事は良くある。

ただし、それは片方に絶対有利、片方に絶対不利ではあるが。


   「レイアーズ=クルストス!力を見てやる。一対一だ・・・来な。」


 ふいにカイが口を開き、レイアーズに向かって軽く挑発する様に掌を振る。

レイアーズは喜色満面の笑みを浮かべた後、一旦ソウルに振り返って一言。


   「手を出すなよ。」


 カイは振り向かず、


   「バルア、手出し無用だ。」


 その相方へ向けて言葉を発す。


   「ああ。」 「分かってるって。」


 それに対するソウルとバルアの返答はほぼ同時。

その返答を聞くが早いか、レイアーズとカイは動き出していた。


  −キン!−


 金属の擦れ合う澄んだ音が会場中に響き渡る。

カイが刹那に振り抜いた剣をレイアーズが下段から振り上げる形で受けたのだ。

そこからしばしの鍔迫り合い。


   「ダァ!」


 ジギジギジギと嫌な金属音を響かせる中、レイアーズが気合いと共にその剣を押し返す。


   「ハッ!」


 押されたカイはその動きに逆らう事無く押され、しかしその力を右に流しながら自身は左へ回転、その流れのまま刃をレイアーズの首筋へ向ける。

体勢を崩している状態のレイアーズは回避できる状況にない。


   「ダァァアアア!」

   「クッ・・・」


 思わず助けに入ろうと魔力を練り込んだソウルだったが、その後のレイアーズの咆哮によって踏み止まった。

レイアーズは剣を片手で扱っている。

体勢を崩され、そのままの流れで首を狙われた回避不能な筈の一撃を、レイアーズは中空より取り出したもう一本の剣で受け、そして体勢を持ち直して二本の剣を交差させ、更なる気合いと共にカイを押し返す。

レイアーズ得意の≪シュルノウ≫を応用した特異な剣技。

何もないと思っていた場所から急に出て来る剣は初見では対処に戸惑う。


   「行きます!!」


 律儀にもそう宣言して、レイアーズは腰を落として突撃の構えを取る。

カイはそれに合わせて受け止めるように腰を落とした。


   「イアァァアアア!!!」


 レイアーズは叫びつつ、剣を一本を上空へ、もう一本をカイへ向かって投げつける。

そしてその投げた剣の陰に隠れるようにしてレイアーズはカイへ向かって突っ込む。


  −キン!−


 カイは剣を振り抜いて自身に投げつけられた剣を叩き落とす。

その一瞬の隙を突いてレイアーズはカイの懐に入り込んだ。


   「クッ!」


 カイは体を捻ってレイアーズを斬り捨てようとするが、レイアーズはカイにピッタリ体を寄せていて剣では斬り辛い。

カイの剣はレイアーズの背中の薄皮を一枚斬ったのみで大きなダメージは与えられなかった。


   「フゥアァ!!」


 レイアーズは≪シュルノウ≫によって取り出した短剣を逆手に握り、下から上へ切り上げる。

カイはそれを体勢を半身にする事で何とか回避したが、しかし今度はそのカイに上空より剣が落ちてきて、カイはそれを上を見る事無く剣を使って弾く。


  −キン!−


 しかし体が半身であり、なおかつ剣で上空の剣を弾いた事により、カイは片手は後ろに、もう片手は上に、両腕を塞がれた状態になってしまう。


   「ここだぁ!!」


 そこを狙ってレイアーズは右手を振り抜く。

左から右へ、≪シュルノウ≫によって取り出された剣がその掌には握られていた。


   「惜しかったな。」


 バルアが賞賛するように呟いた。

結果として、レイアーズの剣は空を切り、カイはその剣に一切掠る事も無く、気付けばレイアーズの背後に回っていた。


   「珍しいなカイ。お前が回避に全力を出すなんて。」

   「・・・俺は何時だって真剣だ。」


 バルアの隣まで移動したカイはバルアと短く言葉を交わす。

その後、剣を振り抜いた姿勢のまま固まっているレイアーズへ目を向け、


   「やるじゃないか。」


 微笑してバルアと同じくレイアーズを称賛する。

レイアーズはその言葉で我に返り、そしてカイの言葉の意味を咀嚼して破顔する。


   「本当!?」

   「悪くないと言うだけだけどな。」


 バルアもそこは褒める一辺倒だけではない。

褒めれば調子に乗るタイプであるレイアーズの性格を良く分かっていると言えるだろう。


   「≪シュルノウ≫を使った剣技か。もう少し流麗に滑らかに剣の出し入れが出来るといいな。そうした上で、敵の動きを見切る動体視力を鍛えろ。」


 バルアの言葉にカイが続ける。

より強くなるための助言だろう。

レイアーズは首が千切れるのではないかと言うほどに頻りに頷いていた。


   「さて、次はお前だ、ソウル=エルトライト。」


 カイが今度はソウルに向かって切っ先を向ける。

ソウルはその切っ先を見つめ、背筋にかつてないほどの戦慄を感じた。

それは恐怖ではない、畏怖でもない。

それは歓喜だ。


   「では・・・構えろ。」


 カイがチャキリと剣を鳴らし、ソウルに刃を向ける。

ソウルはそれを受けて、体内に流れる残り僅かな零力とは別に、魔力を強く練り込める。

最初の一撃から最強級の魔法を撃つためだ。


   「・・・!!」


 何の前触れもない。

剣を構えた状態のカイがゆらりと一歩足を踏み出したと思ったら、その瞬間にカイの姿は視界から消えた。


  −ギィン!−


 特に何かを意識したわけではない。

予想があったわけでもない。

兎に角我武者羅に、背後にあった殺気に機敏に反応して、ソウルは練りに練り込んだ魔力を全て防御の魔法≪シーレット≫に注ぎ込み、発動した。

カイの剣はそれにぶつかってギチギチと嫌な音を立てる。


   「反応は良し。だが、無駄が多過ぎるな。」


 ≪シーレット≫は魔力を込めれば込めるほど強くなる魔法である。

ソウルの発動した≪シーレット≫には本来カイの剣を受けるには余分過ぎるほどの魔力が注ぎ込まれてしまっていた。


   「クッ!」


 攻撃に回そうとしていた魔力を全て防御に利用してしまったため、ソウルは舌を打ちつつ再度魔力を練り込む。


   「≪ボルティカウルク≫!」


 カイが≪シーレット≫から剣を引き離し、ソウルと間合いを取ったところでソウルは魔力の練り込みが完了した。

発動するのはソウルの持つ魔法の中でも特に魔力を喰う最強級の天雷の魔法≪ボルティカウルク≫。

また、必要魔力からはまたかなり掛け離れている量の魔力を練り込んでしまっていたが、それでもこの魔法の威力は中途半端なものではない。


   「な!?」


 その時のカイの驚愕の表情が印象的だった。


   「クッ・・・≪シーレット≫!」

  −ズガァン!!−


 瞬間、カイはソウルが使ったのと同じ防御の魔法を発動する。

そうして、青天の上空よりカイを目掛けて雷が降り注いだ。

やがて巻き上がった砂埃が収まり、しかしそこにカイは無傷で立っていた。


   「倒せるとは思っていなかったが、まさか無傷とは・・・」


 雷を苦手としていたとはいえグリーズデラブレーですら一撃で動けなくなった≪ボルティカウルク≫を受けて、しかしカイは平然としていた。

ソウルが瞬間に練り込める全力の≪シーレット≫を使っても、恐らく自分自身の≪ボルティカウルク≫を完全に防ぎきるなんて事は出来ない。

カイはもともと魔力を練り込みながら動いていたのだろうが、そうして≪シーレット≫に注ぎ込んだ魔力の量はソウルとは比べ物にならない。


   「いや、カイに魔力を使わせただけでも大したもんだ。」


 ふいに背後からバルアに声を掛けられた。


   「なんだその魔力の練り込みの異様な速さは・・・」


 カイはカイでソウルが聞き飽きるほど聞いたその言葉でソウルに問い掛けてくる。


   「ま、カイとは違う方向性の天才と言う事だろ。」


 それにはバルアが軽い調子で答えた。

確かに、昔からソウルはそう呼ばれてきたが、フィルによって自身の魔力の練り込みの速さの異様さの理由を知った今では『天才』と呼称されることに何やら違和感を感じる。


   「ふん。まあいい・・・行くぞ。」


 カイが再度剣を構え、そして足を踏み出す。

ソウルの血の気がサッと引いた。

先程までの速度とはまた桁違いの速度でソウルの懐まで潜りこんできたからだ。


   「クッ!」


 一瞬カイが足を止めたせいか、完全にソウルの懐でカイの姿を何とか視認でき、ソウルは右拳でなんとか殴り抜けようと振り抜く。

しかしその拳は空を切り、瞬間に背後からの灼熱の殺気と首筋に当たる刃の冷たい感触の死の気配を感じた。

ソウルは思わず戦慄し、









  ―堅固の想像を、排他の意思を、拒絶の思念を零力に込めろ!









   「離れろぉ!!」


 体内に残り少ないフィルが流した零力を全力で零顕に注ぎ込んだ。

同時に体内にあった違和感が全て抜けて行く。

どうやら、体内の零力を使い切ったらしい。


  −パカァン!!−


 そして風を断つ快音が轟き、カイはその何も無い空間に押されて吹き飛ぶ。

大きなダメージこそ通らなかったが、しかしカイと間合いを取る事は出来た。


   「そうか秘法師か・・・稀有な才だ。」


 カイは剣を腰の鞘に戻しながら呟いた。

もうやる気はないらしい。


   「充分だ。バルア、相手をしてやれ。」


 カイはバルアに指でクイッと指図すると、そのまま闘技場の扉の方まで歩いて行き、その出口の脇に凭れかかって座り込んでしまった。


   「まあいつもの事だ。気にせんどいてくれ。」


 怪訝な表情を浮かべるソウルとレイアーズに向かってバルアは二カッと笑って言った。


   「まあ俺は助言もして貰えたし満足だけど・・・」

   「ハハ・・・そうか、やっぱりそんな風に思っているのか。」

   「「?」」


 バルアの言葉には両者ともに怪訝な表情を浮かべて首を傾げる。


   「さて、お喋りはこれくらいにして、今度は俺とやろうか。二人同時に来なよ。」


 バルアが背中の巨剣を下ろして構える。

その剣は半端ではない大きさで、どう見てもその質量は一般の人の二本の腕で扱えるような重さには見えない。

しかし、その切っ先は異様な迫力を持っており、その動きは鈍重そうであるのに、自分達から仕掛ける事はソウルにもレイアーズにもどうしてもできなかった。


   「だろうな。じゃあ俺から行こうか。」


 するとバルアはその剣を肩上に担ぎあげたままレイアーズに向かって駆け寄ろうとし、そのレイアーズのやや手前の地面にその巨剣を突き刺して支点にして跳び上がり、そのまま空中で引き抜いてレイアーズ向かって叩きつける。


   「ォォオラァア!!」


 その大仰な動作は流麗で、見た目以上に素早く回避が困難だ。

レイアーズはその剣を喰らう前に何とか横っ跳びで避けた。


   「うわっ!?」

   「ウグッ!」


 しかし、ドォ!という轟音と共に叩きつけられた剣圧と砕かれた地面の破片によりレイアーズは、そしてそれほど遠く離れていたわけでもないソウルは吹き飛ばされる。

その巨剣を振り抜くだけで、直接当たらずとも周囲に多大な被害を及ぼす武器となる。

恐ろしい攻撃であった。


   「だからカイはあんなに離れたのか・・・」


 ここに来てソウルは初めて理解する。

カイはソウル達と戦う気が失せたのではなく、バルアが戦う際に巻き込まれない様に戦線から離脱したのだ。


   「それはちぃと違うな。」

   「え?違うの?」


 レイアーズが素直にバルアに問い返す。


   「今回は見せる機会はないが、カイ&バルアのレギオンは二人同時に戦線に立って初めて本来の力を発揮するんだぜ。」


 つまり、カイが戦線から離脱したのは巻き込まれないためではないとバルアは言っている。

あの豪快な剣の振りに、カイの様な小回りの利く人間は確かに理想的な組み合わせではあるのだが、しかしソウルにはどうにもそれに違和感を感じた。


   「へぇ、そうなんだぁ。」


 感心した様な声を出しながら、レイアーズが背後からバルアに斬り掛った。

それをバルアは背中に剣を回す形で受け、そのまま振り抜いてレイアーズを自身の前に誘き出す。


   「オラァ!」


 地面に転がったレイアーズにバルアは躊躇いなく上段から巨剣を振り下ろそうとする。


   「≪ウィグル≫!」


 それはソウルが横から風の弾丸をバルアの持つ巨剣の刀身に当てて軌道をずらし、巨剣はレイアーズに当たる事無く地面を砕いた。

その風圧でレイアーズは後ろへ吹き飛ばされたが、空中で一回転し、なんとか両足で着地した。


   「はは、やるな。じゃあ、もうちょい力出そうか。」


 バルアの目がスッと鋭くなる。


   「レイアーズ!跳べ!!」


 気がつけば、爆発的に増大した殺気と危機感にソウルは思わず叫んでいた。

レイアーズも同じの様で、ソウルの声に逆らう事無くその場で跳び上がる。

その瞬間、レイアーズが元いた場所を巨剣の刃が駆け抜ける。

跳び上がっていなければ、確実にレイアーズの体は真っ二つだっただろう。


   「ソウルゥ!後ろだ!!」

   「な!?」


 今度は跳び上がったレイアーズがソウルに大声を張り上げる。

ソウルは慌てて振り向くとそこには既に巨剣を大上段に構えたバルアがいて、思わず足を止めてしまったソウルはその斬撃を回避する事が出来ない。


   「(迂闊った・・・)」


 悔やむ事刹那。

どうすれば避けられるかに思考を全力で注ぐ。


   「(魔法?体術?それとも零顕か!?どうする!?俺の位置を動かすのか、バルアを動かすのか・・・)」


 バルアの腕に力が入り、筋肉が軋むのが見えた。

もうコンマ数秒と待たずに振り下ろされるだろう。


   「(だが、クソッ!・・・零顕はもう使えない・・・)」


 先程カイを吹き飛ばすのに、残っていた零力も使い切ってしまった。

今ソウルの体内に零力は残っていない。

となれば、当然零力を必要とする零顕を使用する事は出来ない。


   「(いや・・・まだ手はあるか・・・)」


 零顕を使用する手段としてはもう一つ。

本来はこちらが通常だが、今はまだソウルに出来るかどうかは分からない。


   「(ええい!どうでにもなりやがれ!)」


 かくてバルアの巨剣は振り下ろされる。












  ―簡単な事だ。生命力を利用して魔力を分解、構築し直せ。命を削って魔力を分留しろ。













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