プロローグ
死ぬことは別に怖くなかった。
むしろほっとしたくらいだ。碌でもない、とは言わないけれど、それに近いくらいには底辺な人生だった、というのは自己感想。
幽霊やら魂やらなんて信じていなかった。神様を信じているような人間でもなくて、困った時の神頼み、な都合のいいことを望む程度の、多分どこにでもいるような日本人だった。だから当然、生まれ変わりやら輪廻転生やらなんか信じてもいなかった。
むしろ生まれ変わるなんて死んでも御免だった。
それなのに死ぬ前に、ぼんやりとだけど、次は幸せになりたいなあ、なんて思ってしまったのがいけなかったのか。
うっかりと生まれ変わってしまった。
しかも、多分、元の世界とは違う世界に。
何というか中世ヨーロッパ風味とでも言えばいいのか、日進月歩でテクノロジーが進化して便利な世界で生きていた私には非常に不便な世界の、私の生まれ変わり先での人生は、私的にやっぱり結構酷かった。
世知辛く無情な人生を繰り返すのは、神様だの何だのを信じていないくせに都合良く願い事だけはしていた前世の罰が当たったのか。因果応報、業、というやつなのか。