89【マリア5】
その後、私はネニュファール家の屋敷に招待され約三ヶ月ほど過ごさせて頂きました。
そしてこの三ヶ月間は私にとってとても刺激的な日々でした。
初めにネニュファール家の当主であるブレイン様に挨拶しに行った時はとても緊張しました。
もしかしたら歓迎してくれないのではないか、怒ってサレーナ様みたいに暴力を振るわれてしまうのではないかとビクビクしながら挨拶をしました。
そしたらブレイン様はいきなり泣き出して「やっと、やっとエレナにも友達が出来たんだね!これからもエレナをよろしく頼むよ!」と私のことを大歓迎してくれました。
エレナ様のお母様であるローゼ様とダリエ様にも「エレナの友達になってくれてありがとう!」と言われエレナ様は本当に御家族に愛されているのだと思いました。
その後、ロゼさんから私の事情を聞いた三人は私を強く抱き締められ、「辛かったね。ここにいる間は私達があなたのことを護ってあげるからね」と声をかけてくださいました。
思わず泣きそうになりましたがそれは内緒です。
それからはエレナ様と一緒に勉強をしたりエレナ様がヴィルデ様や騎士団の人達と訓練しているのをリリ様と一緒にお茶しながら見たりととても楽しい日々が続いていました。
ここで初めて私の常識は壊され、とても優しく暖かい常識が芽生えました。
本当にこのまま時が止まればいいのにと心の底から思うほどに私は動かされたのです。
「マリア、いろいろ終わったから今日家に帰すね」
約三ヶ月ほど経った時に不意にエレナ様に言われた言葉です。
私はこの言葉に絶望を覚えました。
この楽園を離れ、また牢獄に戻らなければいけないと思うともうこのまま死んでしまった方がいいのではないかと思うほどに辛い思いでした。
「そんな悲しそうな顔をしないで。
メイプール侯爵家は潰したからあなたに暴力を振るっていた夫人も何も出来なくなったからあなたは何も心配しなくていいのよ。」
え?
どういうこと?
潰した?
メイプール家って侯爵家だよ?
私の頭の中は?マークでいっぱいだった。
「いいからいいから。
ほら、行くよ」
そう言ってエレナ様は私の手を取り馬車に乗り込んだ。
「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」
家の前まで着くとそこには私の家のメイドが並んで挨拶をしてくれた。
え?
どうなってるの?
今まではいないものとして扱ってたのに。
「お嬢様、お帰りなさいませ。
そして、今まで申し訳ないございませんでした」
私が戸惑っているとメイド長が私の目の前まで出てきて謝ってきた。
ほかのメイドもメイド長に合わせて頭を下げている。
「え、エレナ様」
私は訳が分からずエレナ様に助けを求めたがエレナ様は何も言わずそっと私の背中を押した。
「え、えーと。
た、ただいま戻りました」
「「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」」
そして、もう一度メイド達の私を出迎える声が響き渡り、本当に久しぶりの心からの「お帰りなさい」を受けた私は思わず涙してしまった。
◇◆
これは後にわかった事なのですが私がエレナ様の家で暮らしている間にエレナ様が動いてくださりメイプール侯爵家は本当に取り潰されることが決定したらしいです。
それに伴いサレーナ夫人は後ろ盾を失い発言権を失いました。
サレーナ夫人は、私だけでなくメイプール侯爵家から来たメイド以外の人々にもきつく当たっていたらしく今ではやり返しを受けてるとかいないとか。
あと、それからの私は優しくなったお父様やメイド達に囲まれたり、たまにエレナ様や新たにお友達になったエリカと共に遊んだりととても充実した日々を過ごさせてもらっています。
これも全て私の大親友であり将来通して支えるべき相手であるエレナ様のお陰です。
私はこれから先死ぬまで、例え世界の全てがエレナ様の敵になったとしても絶対に私だけは見捨てません。




