85【マリア1】
私の人生は両親の操り人形でしかなく、これからもこんなつまらない、自分の価値を見出すことも出来ずに周りの人々の顔色を伺って生きていくのだろうの本気で思ってたし、それが当たり前の事だと心の底から信じていた。本当に教育とは恐ろしいものだ。子供の頃からそれが当たり前だと教えられ続けるとその人にとってそれが当たり前のことになり疑う余地すらなくなる。もうそれは一種の洗脳と言っても過言ではない。
私が八歳だったある日、私が自室で読書に勤しんでいるとお父様がノックもなしに部屋に入ってきた。
今考えるといくら娘とはいえ女性の部屋にノックをせずに入るのはどうかと思うのだが、当時のお父様は私のことを自分の所有物と考えていただろうし私もそう思っていた、というかそう思わされていたので何の違和感も不快感も感じなかった。
私には二人のお姉様と一人のお兄様がいるがこの頃はほとんどあったことがなかった。お姉様達も私のように人形のような生活を送っていたのだろうか?それとも普通の人のように好きに生きているのだろうか?とそんなことばかり考えていたような気がする。
「明日、大切なお客様が来られる。
お前と同じ年齢だ。
お前のことも向こうには知られているからおそらく接触をはかろうとするだろう。
失礼の無いようにな。
お前には難しいとは思うが友人関係になれ、我が家のためにな」
お父様は私に何も期待しない。
いつもの事だ。
「はい、わかりました」
私は、そう答える。
というよりNOという選択肢は私には与えられていない。
「絶対に友達になりなさい。
それがお前のためになる」
お父様は珍しく私の近くに来て私以外の誰にも聞こえないように囁いてから部屋を出ていった。
次の日の昼過ぎ、お父様が言っていた通り、私と同じぐらいの年齢の女の子が数人の従者を連れてやってきた。
私はそれを自室の窓から眺めていた。
お父様は、その人達を家の中へと案内している。お父様は凄く媚び諂っていた。我が家は伯爵家で結構高い身分であるのでお父様のそんな表情は初めて見たのでとても驚いた。
「お嬢様、旦那様がお呼びです」
「はい」
私は手に持っていた本を机に置き立ち上がる。
「いっ!」
立ち上がった途端、脹脛辺りに激痛が走る。
「お嬢様、どうかされましたか?」
「いいえ、大丈夫です」
「では、参りましょう」
私は呼びに来たメイドの後ろについて行く。
◇◆◇◆
私ことエレナは今日、ロゼに連れられてグレンツェン伯爵家に来ている。
なんかよくわからないが仲間に引き入れるかいなかの最終確認に行くとかなんとか言っていた。
私は、いつも通りただいるだけでいいらしいなんて楽なお仕事なんでしょう。
あ、でも今日行くグレンツェン伯爵家には私と同い年の女の子がいるらしくお友達になれたらと思っている。
「ようこそいらっしゃいました」
着いてすぐにグレンツェン伯爵家の当主であるダングルク様が出迎えてくれた。
そのまま案内された部屋に入り促されたソファーに座る。
「初めまして、グレンツェン伯爵家の当主、ダングルクでございます」
「こちらこそ初めまして、ネニュファール公爵家の長女、エレスティーナと申します。
こちらにいるのが私の専属メイド兼交渉役のロゼです。
ほとんどの話し合いはこのロゼに任せますのでよろしくお願いします」
「ロゼです。
よろしくお願いします」
私の後ろに立っているロゼが深く頭を下げる。
「よろしくお願いします。
少々お待ちください、ただいま娘を呼んでいますのでどうか仲良くしてやってください」
「はい、こちらこそ」
コンコン
「マリアです」
「入りなさい」
「失礼します」
そうして一人の少女が部屋に入ってきた。
「初めまして、グレンツェン家三女のマリアと言います」
マリアはスカートを軽くつかみ頭を下げる。
「初めましてネニュファール家長女のエレスティーナよ。
エレナって呼んでね。
それで、こっちに来て」
「え?
あ、はい」
マリアは一瞬戸惑った後、私の方に来た。
「きゃっ!」
私は立ち上がりマリアの手を掴み私の後ろへと引っ張る。
「ダングルク様、お話しましょうか」
私はもう一度席に座り直しダングルク様に告げる。




