83【アドニス様とお兄様】
「お嬢様。
到着致しました」
「ありがとう」
私は、そう言ってロゼの手を借りて馬車から降りる。
「いってくるわ」
「いってらっしゃいませ」
そうしてロゼに見送られながら校門を通る。
「エレナ!」
「うぐっ!」
校門を通ったところでアドニス様が突撃してきた。
「「「「キャー!!!」」」」
アドニス様が私に抱きついた途端、周りのお嬢様達から熱のこもった叫び声が聞こえる。
「あ、アドニス様、く、苦しい!」
「アドニス様、嬉しいのはわかるがエレナが苦しがっているから離してやってくれ」
アドニス様の背中を軽く叩きながらギブの合図を送っていると今日は入学式の準備があるからという理由で先に登校していたヴィケお兄様が助けに入ってくれた。
「あ、ああ。
エレナ悪かった。
ついやってしまった」
「もう、これ中等部に入った時もやって来ましたよね?
たかが2年ぐらい我慢してください。それにこの2年間全くあってないわけではないでしょ?」
この数年でアドニス様からの愛情が凄くなった。
別に何かしたとかそういうわけじゃないのに耳元で「愛してるよ」とか囁いてくるし、今みたいにところ構わず抱きついてきたりする。
別に嫌ってわけじゃないけど困ってはいる。
「アドニス様、いい加減にしてください。
王族であり、本校の生徒会長であるあなたがそんなんでは他の生徒に示しがつきません」
お!
お兄様、よく言ってくれました!
「そうだな。
すまない」
「ご機嫌よう、エレナ様、アドニス様、ヴィケ様」
「あ、マリア、ご機嫌よう」
「おはよう」
「マリア殿、おはよう」
正門近くでバカ騒ぎをしていると今来たのだろう私の親友の一人であるマリアが挨拶をしてきた。
マリアは侯爵家の長女で普段はおっとりした性格だが怒ると怖い。
普通なら最初に一番身分の高いアドニス様に挨拶するのものなのだが、マリアともう一人の親友のエリカは学内ではほぼ私と一緒に行動していることもあり、アドニス様やヴィケお兄様とも面識がある。
ていうか結構仲がいい。
その五人で集まるとほぼ100パーセントの確率で話が盛り上がっている。ちなみに話題が私のことで「エレナ様は凄いんですよ!」なんて盛り上がり方をしているので張本人の私はとても居心地が悪い。
「そろそろ移動なされた方がいいと思います。
凄く注目されてますし、このままでは通行の邪魔になってしまいます」
「そうだな。
俺達もそろそろ教室に戻るよ」
「そうですね。
それではまた。
マリア、行きましょう」
「はい、エレナ様」
そうしてアドニス様達と別れてマリアと自分の教室に向かって歩いていった。
「おはようございます」
「エレナ様、おはようございます」
「ご機嫌よう、エレナ様」
私が、教室に入り挨拶をするとすぐさま教室にいた生徒たちから挨拶が帰ってくる。
まあ私は公爵令嬢で私の学年では一番身分が高いし、この中の何人かの家と私個人で繋がりがあるらしいのでそれも理由の一つだろうと思う。
ちなみに皆さんわかっていると思うが全部ロゼに任せているので誰の家と関わっているかは知らない。マリアともう一人の親友のエリカの家とは仲良くしているのは知っているのでそれで十分だろう。
「エーレーナー様!」
席につきマリアと談笑していると女の子が一人、私の名前を叫びながら突っ込んできた。




