犬と狼編 6th-contact
6th-contact
似通う生活
梅雨です。
ジメジメとカビの生えやすい季節に入って数日、このごろ学校が楽しくってたまらない。
小堀さんは最近女の子の友達が増えて、とても楽しそうにしている。
まるで入学当初の僕みたいな感じに。
「おーい篠田ー」
雨の音の合間から海堂くんの声がする。
家こっちだったんだ。
「おはよう」
「おはよう!雨は嫌だなぁ篠田ァ」
「僕はそうでもないよ。雨の匂いとか好きだし」
「雨が好きって、やっぱお前変わってるよなぁ」
「失礼だなぁ……」
梅雨になると少し気分が明るくなる気がする。
でもそれは僕だけで、この季節は周囲の雰囲気がどんよりとするのだ。
「それで篠田、小堀さんとはどうなのよ?」
急に話題を振られて、少し慌てる。
「どうなのよって、まぁ、いつも通りだよ」
「つまんねぇぞ。もっと惚気を出せよ!」
そんなこと言われてもなぁ。
と、海堂くんと世間話をしているうちに、学校に着く。
「あ、りっくんおはよう」
小堀さんは柔らかい笑みを魅せる。
「お、おはよう!」
なんでだろう。こんないつもの挨拶が緊張する。
幸せだな。
「なんだかふわふわしてるね」
「そう?」
「梅雨の時期って、いつもそんな感じだったねぇ」
「梅雨好きなんだ。匂いとか」
それを聞いて楽しげに笑う小堀さん。
やっぱり、癒されるなぁ。
「あ、また充電?」
「なんでわかったの?」
「なんとなく、かな?」
✲✲✲
今日も雨降り。
なんだか、気持ちが沈むなぁ……。
そんな事を学校についてから、いや、つく前も言ってたっけ。
早くりっくん来ないかなぁ。
英語の予習をしながら、私はひたすら彼のことを考えていた。
「梅雨の匂いが好きって、お前変わってんなぁ」
海堂さんの声だ。
それじゃありっくんも来てるかな。
「あ、りっくんおはよう」
緊張して変になっちゃった。
「お、おはよう!」
りっくんもだった。
──「そういや、篠田の名前知らねぇな」
唐突に、海堂さんが疑問を口にした。
それを聞いた途端、りっくんはビクリと震えた。
「小堀さんはりっくんって呼んでんだけど、ちゃんと名前からとってんだよな?」
「うん、そうだよ」
「で、小堀さん。こいつの名前なんてぇの?」
言っちゃっていいのかなぁ…。
「えっと……。りっくん、言っちゃっていい?」
「……うん」
頷くりっくんの顔は血の気が引いて真っ青になっている。
顔が大丈夫じゃないよ!
「了承してくれたし、小堀さん。おせーて?」
「……篠田、莉奈」
「え?」
「名前は、莉奈だよ」
聞いた途端、海堂さんは吹き出した。
このあとしばらく名前でいじられて、怒ったりっくんの拳が海堂さんのみぞおちを捉えた。




