犬と狼編 #0
ぴたりと足が止まった。
桜並木の中でただ1人、本を読む女性から、僕は目が離せないでいた。
彼女の名前は小堀愛。
僕はその名前に聞き覚えがあった。
9年前、僕がまだ小学2年生だった頃だ。
ちょうど今みたいに桜が咲く春、彼女は僕のいる小学校に転校してきた。
物静かでいつも本を読んでいた。
そのせいかクラスにあまり馴染めず、よく意地悪をされていた。
その度に僕は彼女を庇い、自分を犠牲にしてまで彼女を守った。
僕は彼女とクラスメイトとの間に入り、彼女も少しずつ輪の中に入っていけるようになった。
いつか彼女と約束したことを、今でもはっきりと覚えている。
『もし、離ればなれになっても、きっといつか、君の元に──』
✲✲✲
入学式の日、私はあることに気づいた。
彼がいること、唯それだけが嬉しくて。
小さい頃、虐められていた私を、そのたびに守ってくれた彼が今、ここにいる。
今までこうやってやってこれたのも、彼の優しさのおかげだったのかもしれない。
考えすぎかな?
でも、たしかに彼の影響も大きい。
そう思えるほどに、彼は私にとって、とても大きな光だった。
今の彼は、私に気づいているだろうか?
あの日私に言ってくれたあの約束を、覚えてくれているだろうか。
いや、覚えていなくてもきっと、私は追いかけ続けるのだろう。
いつか思い出してるれると信じて。
僕はいつまでも君を好きでいるんだろう。
そのことが心のどこかにもしあるとしたら、
いつか僕/私を見つけてください。




