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7話

 結果から言えば74式戦車が街で大暴れと言う最悪にして唯一のバッドエンドは無かった。時は一時間程遡る。

 一団はギルドを預かる(マスター)の厳しいおっさんとその側近達であり会議室に呼ばれたシマダは一人椅子に座ってリラックス。


「ねぇ、お茶とか出ねぇの?」


 椅子に深く座り、背凭れに体重を預けたシマダはアキヤマを通して図々しい事を言う。

 ギルドマスターの男は脇の受付嬢を見遣ると、受付嬢は一礼して去っていく。シマダはニンマリ笑ってギルドマスターを見た。


「何のよう?」


 シマダはまるで呼ばれた理由が判らないと言う顔でギルドマスターを見た。


「理由が分からないか?と仰っています」


 シマダはその言葉に大笑いすると席を立ち上がり部屋をウロウロし始めた。


「質問に質問で返すのはバカの極みだ。

 見ろアキヤマ。高そうなツボだ」


 シマダは白磁のツボを手に取るとランプに掲げたりしてみる。暫くそんな事をやった後に、飽きたのか適当にツボを置くと扉の前に立っていた女騎士然とした女の前に立つ。

 腰にはロングソードを提げて居り壁に背を預けて腕を組んでいた。シマダに関しても軽く睨み付けているだけで話しかけて来ない。


「女騎士やぞ!

 くっころ?ねぇ、クッ殺?アナル弱い?ねぇ?」


 シマダがアキヤマを通じてセクハラじみた質問を投げ掛けると、女騎士は目を閉じてそれに耐える。


「君は道徳心と言う言葉を知っているか?」


 ギルドマスターの質問をアキヤマが訳す。


「回りくどい言い方は嫌いよ。

 じゃあ、エクスカリバー打てるん?」

「君は何故、列を無視し、横入りした?剰え先頭に並んでいた虫狩を脅して。

 更に言えばそれを注意しようとした虫狩を撃ち殺そうとしたそうじゃないか」

「脅した?」

「銃を構えたそうだが?」


 シマダは笑いながらホルスターからガバメントを抜いた。全員に緊張が走る。アキヤマも安全装置を解除た。理由は簡単だ。ギルドマスターの後ろに居る連中が武器を何時でも抜ける様に手を動かしたからだ。


「お前、裸で武器持ってるべ?そこのお前も」


 シマダはガバメントの銃口を槍を持った男とメイスを持った修道女に向けた。

 シマダは相変わらず笑っているがその目は全員の動きを確りと把握しようとしていた。


「じゃあ、俺も裸で銃持っても良いべや!

 譲ってくれって言ったら頷いたからお礼に飴ちゃんもあげたし」


 俺ちゃんヤサスゥイィィ!!と立ち上がって踊り始めた。

 それと同時に見知らぬ少女とフードを目深に被った女が入ってきた。

 侵入者に全員が得物を向ける。シマダは取り敢えずギルドマスターや侵入者に向けてから困った様にアキヤマを見る。アキヤマはシマダを見たあと、腰から銃剣を抜いて取付けた。

 シマダは暫く考えてから一番近くに居て無関心を装っていたヨリコとガキが目に入る。ヨリコの身長は180を超えておりシマダよりもデカい。また、年齢も20代後半から30代だ。

 シマダは二人を見比べてからガキの側に寄っていき、尻でヨリコを突き飛ばす。


「ヒップアタック!」

「痛!?」

「からの〜動くんじゃねぇ!

 ドルトムントの王様の子供が死んじまうぜ!!」


 シマダはガキの頭に銃口を押し付けると叫んだ。アキヤマもその隣に立って通訳する。あまりに“絵”にならない


「ドルトムントじゃなくてドムトガルドよ。

 それと、その子返して。その子居ないと私、この場所から飛んでいけないわ」

「羽衣取られた天女みてーな事言うなよ。鏡見ろよ」


 シマダが何処が天女よと爆笑しながら告げる。流石のヨリコもイラッと来たらしく睨み付けた。


「私、こう見えてもモデルだったんだけど?」


 モデルのヨリコって知らない?と言われたシマダは即答した。


「知らん」


 そこにアメリカの戦車服を着た少女がガバメント片手に前に出てきた。年は15か16だ。


「おい、アンタが74式戦車のプレイヤーか?」

「ガキがチャカ持ってイキってやがる!なんて時代だ!」


 シマダはそう叫ぶとギルドマスターを見た。


「これ、どんな状況よ?」


 アキヤマがそれを訳すと、ギルドマスターは苛立たしげに私が聞きたいと睨んだ。フードを被っていた女がフードを取る。その瞬間、その場にいたヨリコやシマダ、アキヤマを除く全員が傅いた。

 女は何か喋ったがシマダは聞き取れなかった。アキヤマを見るとアキヤマが武器を下ろして欲しいとの事ですと告げる。


「嫌だけど?

 つーか、誰よコイツ。メッチャ美人さんだけど、何か顎とかに変なの付いてる」


 シマダが自身の顎を指差した。女の顎から喉辺りまで鱗のようなものが付いているし、目も爬虫類の様な鋭い目であった。


「帝国の第四皇女殿下エリザベート・メアリー・アウグストゥス。

 新進気鋭の次期皇帝の一角よ」

「マジで?」


 シマダは女、エリザベートを来い来いと呼ぶ。アキヤマがシマダの言葉を訳した。エリザベートは分かりましたと頷き、シマダはガキを解放するとエリザベートににこやかに笑い掛けながら近付く。

 エリザベートはシマダの笑顔に少し頬を緩ませた。


「ハロー異世界のお姫様!」


 シマダがそう告げるとエリザベートも何かを喋ろうと口を開く。その瞬間、シマダがガバメントの銃口を口に押し込んだ。ヨリコはやりやがったと言う顔で顔を覆い、ギルドマスター側は完全に武器を抜いた。


「さぁーて、人質に取ってみたは良いけど、どーすんのさこの状況?」

「知らないわよ」

「このお姫様殺したら俺も次期皇帝の座狙える?」


 シマダが尋ねながらハンマーを下ろすので流石のヨリコも冷や汗を隠せない。頭が完全に逝かれているとしか思えないのだ。銃をおもちゃか何かと勘違いしているとしか思えないその言動は存在しているだけで危険である。


「な、74式戦車のプレイヤー!

 アンタの目的と名前は何だよ?」


 ガバメントを持った少女が尋ねる。


「正義!仮面ライダー2号!」


 シマダはそう言うとガバメントの少女に真っ直ぐと歩み寄っていく。銃口は未だにエリザベートの口の中なので、エリザベートも必然的にシマダに随伴する。


「そのネタをわかる子はほとんど居ないわよ」


 ヨリコが呆れた顔で告げると、シマダは肩を竦める。そして、エリザベートの口からガバメントを抜くとガバメントの少女に改めて向き直った。


「俺ちゃんの目的は今の所馬鹿でかいアゲハチョウを探し出すこと!名前はシマダ。

 このガバメントとそのガバメントを交換しない?」


 シマダはエリザベートのヨダレでベットリの銃口先の臭いをスンスン嗅いでから、差し出すが少女は首を立てには振らなかった。

 シマダはエリザベートの羽織っていたローブでヨダレを拭うとホルスターに収めて、ヨリコを見る。


「取り敢えず、お流れの雰囲気なんで僕帰りますぅ」


 シマダはそのまま外に出ようとするが、更に扉が開いて数人の男女が入ってきた。シマダは両手で額を押さえると大きく唸った。



―――

――

.



 シマダはアキヤマに命じて全員を連れて来るよう命じた。部屋のソファーに座ると、アキヤマに置いていくように命じた64式小銃を構えたり狙ったりして遊びだした。


「この銃スゲーよな。

 お前等もグリーズガンとかガーランド持ってんの?」


 シマダは男、シュリダンと名乗った、と少女、ジーナを見る。


「君は日本人だろう?」

「俺ちゃんがロシア人やアメリカ人に見える?」


 シマダは自身の着ている装甲服の襟を引っ張ってみせた。胸のネームは彼がゲーム中に付けていた《2TK-6》と中隊割り振りされ、名前はシマダと縫ってあった。


「単刀直入に行こう」


 シュリダンが告げた。


「姫様の陣営に来て欲しい」


 シュリダンはまっすぐシマダを見る。シマダは相変わらずの笑みを浮かべているが、その目は非常に冷めていた。彼の頭のなかでは必死に何処の陣営に付いた方が得なのかを考えていた。

 勿論、それはお首にも出さない。理由は簡単。シマダは今、今後の人生を大きく左右する選択の一回目を迫られているからだ。今まで続けてきた行動が広まるよりも早く選択肢が現れてしまったのがシマダの誤算である


「随分と焦ってるじゃない、皇女殿下様は」


 ヨリコはこの前の遠征軍に失敗したから?と薄笑いを浮かべた。シマダはパチンパチンと切り替えレバーの引張ロックを弄るの止めて薄笑いを消した。


「何、劣勢なの?」


 シマダはシュリダンの背後に居た姫様、エリザベートを見る。エリザベートは改めて目の前の男を見た。流星のヨリコと同じ国出身の人間で、言葉は不思議な音になっていて聞こえない。しかし、異世界から来たプレイヤーと呼ばれている存在には伝わるようでジーナに訳して貰っている。

 そして、エリザベートは此処でウソを付くのは得策ではないと判断した。


「劣勢、と言うには少し語弊がある。

 正確に言えば現状の戦力のままでは駄目だと強く感じさせられた。だから、私は貴方にも是非私の下に来てもらいたいと思っている」

「何故、現状の戦力では駄目だと感じた?

 M47ベトのパットンにシュリダン、T-55だぞ?確かに俺の74式があれば更なる戦力になるが、その三両が揃って勝てなかった相手に俺のナナヨン一両放り込んでも意味が無いだろう」


 シマダはヨリコを見る。


「そもそも、だ。

 今の編成に航空機が足らん。何故、アンタは航空機を加えない?二次元の世界に生きているから三次元の戦いが想像できんのか?」


 シマダの言葉にシュリダンとジーナが憤るが、エリザベートがソレを抑える。そして、少し目を瞑ってから答えた。


「私の兄、現在皇位継承権第一の兄、ギルガメッシュ・オジマンディアス・アウグストゥスがジェット機と呼ばれる航空機を専有しており、自分以外の皇位継承権保有者に航空機プレイヤーが付けば例えギルガメッシュ兄様に忠誠を誓っている者でも区別しないと言っている」


 シマダはその言葉に大爆笑をした。


「さすが英雄かつ太陽両王の名前を持つ男だな。

 今更理解している事を仰るのは気が引けますがね、お姫様。現代戦は情報戦から始まり、続いて航空戦、海戦、陸戦に続くんですよ。

 そして、アンタは、今、その空を取られている。陸は海に、海は空に勝てない。

 第二次大戦中、我が日本国は航空戦力を甘く見ていた。大艦巨砲主義に一辺倒し過ぎて自身の確変について行けなかった。

 一の戦艦を沈めるには一千の航空機が必要だが、一の戦艦を作るのに二千機の航空機が作れる。一千の航空機を作って残る金でパイロットを育てるという考えもできる。そして、その航空機も人員も元手ゼロでアンタのお兄様は持ってんだ。

 どうせ、戦闘機が在るってことは攻撃機も在るんだろう?」


 シマダはソファーに完全に寝そべってしまった。

 その時、扉が開いて三人のメイドと一人の少女が入って来る。メイド達はシマダの搭乗員だ。少女の方は知らない。しかし少女はシマダに駆け寄って何かを必死に喋りかけてくる。シマダは少女を一瞥するが全く興味ないという顔で64式銃剣を引き抜いて爪を掃除し始めた。


「シマダ様、全員集合いたしました」

「んじゃ報告」


 シマダは立ち上がって並んだ三人の前に立つと不動の姿勢を取った。メイドの指揮を執っているのはサイカである。サイカが背後二人に気を付けを掛けると、半ば左向け左をして敬礼をする。シマダも半ば左向け左をして答礼。


「人員武器装具共に異常なし。

 道中で車両にまとわりついてきた女児を保護しました」


 サイカは少女を見下ろすのでシマダも少女を見る。少女はやはり何かを行っている。


「あの戦車はお前のものか?とおしゃっています」


 シマダは視線をサイカに戻して、報告は以上か?と訪ねた所でダンと扉が開いた。全員がそちらを見ればひときわ派手な服装をした男がパイロットスーツを纏った男女を連れてやって来たではないか。

 男は何かを告げ、ギルドマスター達はその場で深く傅く。少女は男に駆け寄るし、エリザベートも同様に男に近付いた。シマダは完全に仏頂面だ。


「ンじゃ、明日、アゲハチョウ探しに行くんで今日はもう解散しまーす」


 シマダは明日の朝ぐらいにギルドに集合でとヨリコに告げると去っていこうとした。勿論、そうは問屋が卸さない。男の後ろについていたプレイヤー達が邪魔をするが、シマダは何の躊躇もせず、ホルスターからガバメントを抜いてプレイヤー達の腹に弾丸を叩き込む。


「殺せ」


 そして、3人のメイドが小銃と短機関銃を使って腹を抑えている3人は何の迷いもなく撃ち殺してしまった。男はその見下したような笑顔を凍りつかせ、エリザベートは驚愕の顔でシマダを見る。ヨリコやシュリダンも自分たちの武器を抜いていたが、ただ一人、少女は喜んで笑って手を叩いている。

 シマダは死んだプレイヤー達の武器装具を回収して部屋から出ていった。

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