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私達の冒険譚  作者: 喜求
4/8

再開

 チュンチュン



「ん…」




 朝チュンの音に起こされるという珍しい体験をして起床。

 起き上がりうーんと伸びをして頭をスッキリさせる。



「いい朝ね」


 そういって下に降りる。





「ん、おはようミカ、早起きだね」



 と、朝ごはんを用意していたアキラに出くわした。



「そっちこそ随分早起きね、まだ日が登り初めた頃だというのに」


「ま、今日は特別な日だからな。それに、早めに出る予定だったしね」


「サラちゃんは?まだ寝てるの?」

「多分起きてくると思う、さ、準備もあるし早く食べよう」





 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 ご飯の用意をし、ちょっと早めの朝食が完成したころ。


「おにーちゃーん」


 ドタドタと昨日も聞いた足音と共にサラちゃんが降りてきた。


「サラ、起きてきたのか」

「もう一人で起きれるもん」


 もう私達が出ていったと思ったのかボサボサの髪をそのままに慌てて降りてきた様子だ。

「とりあえずその髪をなんとかしないと、せっかく綺麗な髪質なんだから」


 言いながら私はサラちゃんの髪を手櫛ですいていく。







 しばらくして皆がご飯を食べ、準備を進める。



 準備といっても大体のことは前日済ませてあるのだけれど。

 にしても異世界に来て早速旅が出来るとは運がいいのかなんのやら。


「食料…よし、寝袋…よし」


 アキラが一つ一つ荷物をチェックしていく。

 アキラが言うには旅は危険なものだから入念な準備にこしたことはないとのこと。


「よし、準備完了だ」


 チェックを終え準備終わりの合図をだす。


 すると寂しそうな口調で


「お兄ちゃんもう行っちゃうの?」


 サラちゃんが問いかけてきた。

 さすがに今まで一緒に過ごしてきた家族がいなくなるのは辛いのだろう。なんだか泣きそうな顔をしている。


「ああ、帰ってくるのは当分先になると思う。それまでいい子にお留守番できるか?」

 こくりと頷くサラちゃん。


「じゃあねサラちゃん、また遊びに来るからね」

「うん…ちゃんと帰ってきてね」

「もちろんだよ、お姉ちゃんとの約束」







 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 村を出て、唯一の街道を進む。

 この道を1日ほど歩くとキルクスというちょっと大きな街に出るらしい。

 アキラも小さい頃に行ったことしかないから今はどうなっているのかわからないんだとか。



「にしても隣街まで1日掛かるって相当距離があるわよね、交流とか大丈夫なのかしら」

「タルガンのような小さいところはともかく、他の街までの荷馬車が結構出てるようだしそれなりにあるんじゃないかな」


「ふーん」


 そんな話をしながらアキラは両手剣、私は短剣を持ちのんびり歩いていく。








 数時間ほど歩いた所で二人は森の中に入っていた。



「鬱蒼とした森ね、見たことない花ばかり…」


 見れば色鮮やかな花やテカテカしてる花など選り取り緑だった。


「あれ、あそこに湖がない?」


 キョロキョロ歩いていたら水の反射が見えた。


「湖?てことはもう結構進んだなあ…ほら」


 アキラが地図を広げ現在位置を確認する。

 覗いてみるとあと半分の所までやって来ていた。


「あともう半分じゃない、このまま行っちゃいましょう」


 私のそんな提案に。


「いや、ここは休憩しよう、前の休憩から随分歩いてるし。そこの湖にいってみるか」


 休憩することにした。




 草をかき分け湖に出る。

 湖はなかなかに清んだ綺麗な水を称えていた。


 少し開けたところで荷物を置き休憩に入る。


「いい眺めね」


 見れば幻想的な木々と美しい湖。



 しばらく眺めていると湖の上でホタルのような光が複数現れた。


「ねえアキラ、あれはなに?」


 指を差しアキラに聞いてみる。


「あれは精霊だよ、一番小さいやつだね」


 精霊

 それは木や土などに宿る超自然的な存在として日本では扱われている。


「あれが精霊?なんだかホタルみたいね」


 夜にでも見たら確実に見間違えてしまうだろう。


「あんな見た目でも人を襲う場合もあるから注意しないと駄目だよ…中には、人懐っこい精霊もいるみたいだけど」


 まるで野良犬のようだ。



「あれ?あそこ、人が倒れてない?」


 精霊の集まっている所をよく見るとなんだか人が倒れているようだった。


「いってみよう」






 湖を約半周して精霊の集まっていたとこまで走る。

 着いてみると見慣れた人が倒れていた。


「沙織!?なんで沙織がここにいるの?」


 見間違えるはずもない、10年以上の仲なのだ。


 アキラが沙織の手をとり脈を確認する。


「まだ息はあるみたいだ、とりあえず荷物を持って寝袋に寝かせておこう、それと、ちょっと早いが今日はここに野宿にしよう」


 私もそれに納得し、荷物をとり、沙織を寝かせる。



「沙織…」



 なんでこの世界にいるのだろう。


 …いや、原因は間違いなくあのお姉さんだ。

 なんで連れてきたのか、色々聞きたいことはあるが、今は沙織の介抱に専念しよう。


 幸い、気を失ってるだけだからすぐ目が覚めると思う。



 薪を集め火を焚く準備をする。

 着火道具は火打ち石しかないが、アキラが器用に火をつける。




 ふと沙織の方を見れば精霊が複数集まっていた。


「ねえ、なんだか精霊が集まっているけど、大丈夫なの?」


 さきほど精霊は人を襲うと聞いてしまったので気が気ではない。


「あまり精霊に詳しくないからわからないけど、今のところなにもしてこないし、大丈夫だと思う……たぶん」


 なんとも曖昧な返事が帰ってきた。

 とはいえ、精霊に有効な対抗策なんて今のところないしどうすることもできないのだけど。




「うっ…………ん……ここは?」



「沙織!」




 沙織が目を覚まし、起き上がる。



「あれ、美花?なんでここに…」


「それはこっちのセリフよ、なんで沙織が…」



 互いに状況が掴めない。

 そんな二人にアキラが割って入り。



「なにがなんだかよくわからないけど…二人共こっちに来なよ、もうすぐ夕飯が出来るから」


 いつの間にやら鍋を用意していた焚き火の所で手招きしてきた。








 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「美味しい…やっぱりアキラは料理上手ね、私もそれなりに料理できる方なのに敵いそうもないや」


 元々一泊の予定だったので献立は野菜を使った鍋料理だった。


「美味しいわねこれ、美花の料理も美味しかったけどこれはそれ以上だね」


 沙織がアキラの料理に評価をつける。


 女として男に料理で負けるのは癪ではあるけど、アキラの料理には文句のつけどころがなかった。



「あ、そうそう、沙織はなんでここにいるの?」


 料理に夢中で忘れかけていた。


「うーん、それがね…あのあとすぐ寝たらへんな所で魔女?に会って美花もいるから異世界にいかないかって誘われて…」


 おおよそ同じ体験をしたらしい。


「それで行くって答えたのね…」


 沙織はなんだかんだお人好しなんだから…。


「うん、だって美花が行くんなら私もついていってあげなくっちゃって思ってね」


 まるで面倒見のよいお姉ちゃんだなあ。


「そう…まあいまさらなんだかんだいってもどうにもならないもんね」


 来てしまったものは仕方がない。


「そんなこといいながらもなんだか嬉しそうだね、美花」


 どうやら顔に出ていたらしい。


「まあね、正直に言って一人だと不安だったから」


 知り合いがいるというのはとても心強い。



「そういえば、美花はなんでアキラさん?と一緒にこんな森の中にいるの?」


 最後の一口を口に運び、沙織が疑問を投げ掛けた。



「私も沙織のように飛ばされて、モンスターに襲われそうになったところをアキラに助けてもらったの、それで、そのあと村に案内されて、旅に出るとかなんとかって言われ今に至る感じかな」


 要約して説明する。

 言ってみると忙しいなとしみじみ思う。


「へー、アキラさんね、私は宮本沙織、どうも家の美花がお世話になりました」

「沙織の家計に入った覚えはないんだけど?」


 そんな突っ込みをするが、沙織はどこ吹く風だ。


「どういたしまして、僕はアキラ、よろしく」


 互いの自己紹介も済んだところで、辺りはもう真っ暗だった。



「もう夜ね、火はどうするの?消す?」

「いや、ここらあたりのモンスターはそこまで強くないから火を避けると思う、それと三人いるんだし交代で寝よう」


 あまり見かけないとはいえ、ここはモンスター蔓延る世界なのだ、夜の見張り番がいないと安心して眠れないのだろう。


「さて、寝る準備をしますか」













「そういえば美花の会ったモンスターってどんなのだったの?」


 丸太に腰をおろした最初の見張り番の沙織が聞いてきた。



「うーん、なんか大きいキバを生やした猪みたいだったよ」


「猪かあ、前に美花のお父さんが獲ってきたのを食べさせてもらったけど意外と美味しかったのよね」


 そんなこともあったなあ。

 あの時はBBQにしたんだっけ。


 …そうだ。


「ねえアキラ、昨日のお肉って残ってる?」


 まだ起きていたアキラに声をかける。



「昨日燻製にしたものをいくつか持ってきた……ほら」


 荷物を漁り、包みから燻製肉を取り出す。

 するとあたりを良い匂いが立ち込めた。


「わあ、いい匂い、食べてもいい?」

「いいよ、明日の昼頃には街につくだろうから」



 匂いに釣られてモンスターが寄ってこないか気になるけど大丈夫かな…。


 そんな不安を他所に沙織はいただきまーすといいながら燻製肉を口にする。


「わっ、なにこれおいしい!」

「ちょ、声が大きいよ、もう少し静かにしないと」


 いきなり大声をだした沙織を慌てて止める。

 さすがにこんなところで声を出されたら何が来るかわからない。


「ご、ごめん…あまりにも美味しかったから…」

「まったく…気を付けてよね」


 そういって寝袋に体を埋める。

 寝袋は2つしかないので私と沙織で交代しながら使うことになった。


「お休み、美花」

「お休み、沙織」






ペース遅いですが地道に続けます。

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