永遠の命
この小説を選んでいただきありがとうございます。趣味で書いてます。粗末な文章ではありますが、お付き合いいただけましたら光栄です。
長編予定でおります。定期的に続きを進めていきますのでよろしくお願いします。
今日は少年の3000回目の誕生日であった。
少年と言うのはあくまで見て呉れの話であり。3000年もの時を過ごしている。勿論、人間では無い。それは永遠の命を持つ奇怪な存在。
3000年も昔に天使を辞めた堕天使の話である。
3000年前の今日。100年に1度行う天使の転生儀式を行った。天使にも寿命があり、1000年程しか生きられない。老いは無く転生を繰り返しているのだが、転生は濁った魂を浄化し、新たな魂として生まれ変わるものだ。
儀式を行うには転生者が100年以上を費やし祈りを捧げる必要がある。
それ故に、天使としての御役目は900年程しか勤める事が出来ない。100年に1度1000年を過ごした天使達が順番に転生を繰り返していると言う事だ。
これは、何者も変える事のできない理なのだ。
今日は大天使を含む500体の天使の転生が行われた。
神は違和感を感じていた。何かおかしい。
この世界を作ってから幾度と繰り返してきた儀式であるのに、わからない何かが紛れ込んでいる。
それがわかった頃には既に手遅れ。
転生し、浄化されたはずの天使達の中に1点の曇が見える。
大天使の中でもズバ抜けて才に恵まれていた天使の転生魂が浄化されていないのだ。
神は転生した天使の元へと歩み寄った。
「そなた、祈りを怠ったな。」
異例の事言え神とて確信は無かったが、それしか可能性がない。
100年の祈りと言うのは、転生後清らかな魂になる為に捧げるものであり、1日、1分とて怠ってはいけないものなのだ。
「私には記憶がございません。故に祈りへの怠りを指摘されましても解りかねます。しかし、一つわかる事がございます。」
天使の言い分に神は眉をひそめ、天使に「続けなさい」と小さく投げかける。
「以前の私は、世界の理。天使の理に酷く疑問を持っておりました。1000年に1度魂は浄化され、以前の記憶は消えます。しかし、それになんの意味があるのか。転生するくらいなら永遠でありたい。私は浄化を、転生を拒みたいと願っておりました。」
その言葉に神は怒りを表し、天使を堕天させた。
「永遠の命を授けよう。下界にて苦しみ悲しみ死を知らず永遠に苦しみ続けるがいい。罪悪の天使よ」
天使は少年の身体と永遠の命を授かり、人間界に溶け込み3000年の時を過ごした。
時代は移り変わる。
3000年前は申し訳程度のボロ布を巻きつけ稲作をしていたと言うのに、現代は高層ビルが立ち並び時間に終われ人々が回っているようだ。人間社会も進化したものだ。
堕天使、少年はスクランブル交差点の真ん中に佇んでいる。理由なんてない。ただ、信号が青のうちは交差点のどこに居ようと勝手なのだ。
「そろそろ死にたくなってきた。」
少年はいつの間にか呟いていた。
無理もない。転生を拒み永遠の命を手に入れたのだが、3000年前何故転生を拒んだのか、永遠が欲しかったのか、未だ己に聞いても答えは出て来ない。
「おいおい少年。どうした?こんなとこに突っ立ってたら邪魔だぞ。もう信号点滅してるぞ。自殺志願者か?そう言うのは人の迷惑にならないところでやりなさいよ。」
突然の出会いだった。スーツ姿の青年は少年の腕を掴み点滅している信号目掛けて小走りになりながら声を掛けた。
この出会いが後に堕天使の答えを導く事となるであろう。