表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

強さのために

「ここでは積もる話もできませんので、場所を変えましょう」

 そう言って歩き出したコウ殿の後ろをついて行く。緊張が表情に出ないように気を付けながら。


「さあ、着きました。どうぞお入りください」

 そう言って案内された場所は、薄暗く、この荒れた町にぴったりの場所。ではなかった。

 その反対。この荒れた街にもこのような場所があったのだなと驚くくらい、趣きのある所。異国の木造建築をイメージさせる、とても綺麗な旅館だった。高級旅館と言われるところだろう。

 奥の部屋に通され、畳二枚分は離れて向かい合って座った。

「では、商談を始めましょうか」

「はい、よろしくお願いいたします」

 このような始め方なのか、と初めての事に戸惑いながらも、私は深々と頭を下げた。ここからが勝負だ。

「と、その前に、翠蓮殿、今回はなぜ貴方がいらしたのか、聞いてもよろしいですか?」

 きっと、この質問も、私を試しているのだろう。一言一句に神経を尖らせる。

「自分自身のためです」

「というと?」

「今回の商談、成立させれば我が国にとってとても利益のあるものです。しかし、成立させるのは難しい。そう聞きました。ならば、もし私一人で成立を成し遂げられれば、それは強さや自信へつながるでしょう。私は、強さも自信も、自分を高められるものを、欠片でもいいからこの手にしたい。そう思うようになりました。自分の弱さを嘆くより、強さを求めて我武者羅になる方が格好良いというものです。なので、この機会を逃すまいと思い、私からここへ向かわせてもらえるよう申し出ました」

「……ほう」

 コウ殿は口出しをせず、最後まで静かに私の話を聞いてくれた。

 こんなことを聞いても、商談の何になるのかは分からない。それに、今話した内容だけれど、私自身が強くなるための踏み台にしている、という事になる。機嫌を損ねられても文句は言えない。本気で成立させる気があるのならば、嘘でも、もっとましな事を言えば良いのに。でも、その考えは一瞬で消えた。きっと嘘を言っても見抜かれる。そう思ったから、ありのままを話した。

 あくまで冷静に、相手の反応をうかがう。

「私は翠蓮殿のお役に立てそうです」

「……といいますと?」

「貴方の判断は正しかった。嘘をつく人に、心を許すわけにはいかないので」

 コウ殿は微笑み、言葉を続ける。

「もし、私の気を引くための嘘をついたのならば、その時はこの商談、無かったことにしようと決めていました。しかし、貴方は事実を話した。とっさの判断だったのでしょう。よく話してくれました」

 この人は、私の心の中を見透かしているようだ。どんなにうまく隠しても、ばれてしまうのだろう。私が、嘘と真実、どちらを話すか迷った事も、もちろん見透かされたようだ。

「では、この商談、現時点ですでに成立している、という事でよろしいのですか?」

「いいえ、まだです」

 え……?

 今の話の流れだと、そういう事だと思ったが……そうだな、そんなに簡単に決まるはずがないか。


「翠蓮殿。貴方にひとつ、頼み事を聞いて頂きたい。返答次第で、成立の有無を決めたいと思います」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ