〜2016年9月21日時刻不明〜
世界は滅亡しました。
そして、新たな宇宙が生まれ、百一番目の地球が生まれたのです。全ての生物は自分の願いを何でも叶えることができる。羽をもたぬ者は大空に羽ばたく雄々しい大鷲になれる。海に憧れる者は立派なエラをもって海にいつまでも漂っていられる。
全ての生物は時間跳躍を自在に行える四次元的存在にもなれるし、自分が神になって世界を滅ぼして創り変えることもできる。つまり、この地球上の全生物は何にだってなれるしそれはつまり何にもなれない、ということでもあるのです。
人間、いや全生物はこうして完全になった、と言えましょう。
あなたはこの滅びた世界で、永遠に楽しく生きていけばいいのです。
俺はいつもの部室にいた。
ここはアニ研部室だけが存在する世界である。
「文化祭、大成功にゃ!」ネコミが歓声を上げている。
「本当、想像以上の客入りだったわよねぇ!これで安心して全国大会に臨めるわね」ユリエも喜びを隠しきれないようだ。
「お前、まだ剣道の大会始まってないだろ?」俺はユリエを茶化してみる。
「うるさい!」そういってユリエは竹刀を手に取り、俺の頭を一刀両断する。
「あぐあっ」
「一本!」カオリ先輩が審判よろしく大げさに腕を振り上げる。
「いやあ、ユリエ様はさすが腕を上げましたなぁ」悪戯っぽくカオリ先輩は笑う。
「それは彼のことを好きな故の、ツンデレのツンってやつですね!」
「ち、ち、ち、違いますよぉ!」ユリエは顔が真っ赤だ。
「ほら、みんな早く座って文化祭の反省会をやるのにゃ!」ネコミが皆をまとめようとする。
「もう、そんなお堅いこと言ってたら頭なでなでの刑だぞ!」カオリ先輩がいつも通りネコミをいじる。
「や、やめるのにゃ!」
といいつつ、満更でもなさそうなネコミは天使。
「何にやけ面してんのよ!」またしても俺の胴に綺麗にユリエの一本が入り、俺は轟沈した。
これが俺の日常。それでいい。それでいいはずだ。
でも、この空しさは何だろう。この寂しさは何だろう。この現実こそが俺が求めていたものなんじゃないのか。現実ってなんだ。何が現実なんだ。
俺は、外を見る。外の世界は虹色だった。部屋の中は羽虫が飛び回る音が聞こえる。まるであのゲームのようだった。
俺は、立ち上がって皆の前に向き合う。
「にいにい?どうしたんだにゃ?」
「何かあったの?」
俺は、絞り出すようにしていった。
「……なぁ、この世界ってさ。本当に現実なのか?」
「……」
「もしかして……」
「……もしかして、この世界は全部俺の妄想だった、なんてことは……」
沈黙。
果てしなく続く沈黙。
突然、部室のドアが開け放たれる。ドアだけじゃない。ドア、窓、その他全てが開け放たれ、部室に虹色がなだれ込んでくる。それは液体のようでもあり、気体のようでもある。虹色が部屋を、人間を、全てを飲み込み、食らいつくしていく。俺はおぼれて、もがき、苦しみ、そして気付くと、
目が覚めていた。




