〜2016年9月19日夜〜
気付くと、俺は、またしても見知らぬ部屋のベッドで横たわっていた。
――また新たなゲームってわけか。
俺は負けない。例えどんなに悲惨な目に遭おうとも、仲間達がいる現実に帰るんだ。
俺はゲームを始めた。
その部屋自体は、大人の部屋と同じもののようだ。ただし大人の部屋ほど散らかっていはいない。散らかってはいなかったが・・・・・・
その部屋は、やたらアニメのポスターやら美少女フィギュアやら漫画本やらであふれかえっていた。360度どこを見回しても、そこにあるのは二次元の少女だけだった。
ここまで物があふれかえっていると、黒い本を探すのも一苦労である。俺は覚悟を決めて部屋の捜索に入った。とにかく黒い本を見つけなければこのゲームは終わらない。
しかし、ひどい有様である。学習机には美少女フィギュアが整然と並べられており、本棚の中は漫画本がぎっしりである。これを一つ一つ調べなくてはならないことを考えて、俺は途方に暮れた。
――これは相当時間がかかるぞ。
一時間後、俺はようやく本棚の奥深くからよく見慣れた黒い本を引っ張り出した。正直ここまでかかるとは思わなかったが、とにもかくにも俺は黒い本を開く。
その本の内容は、稚拙なオリジナル小説だった。
文章表現は未熟なうえ誤字脱字が多く、設定も非常にありきたりでこれだけ見ると大した内容ではないように思えた。
しかし、その内容を見て俺は驚愕した。
その内容は、ネコミという主人公が魔法少女になって悪者をやっつける魔法少女物であった。
ネコミ。
その名前はアニ研部長兼ミス研部長兼その他諸々のあの幼女と同じ名前だった。
――カオリ先輩の時と同じだ。
偶然にしては出来すぎである。
なぜ現実に存在するはずのあの二人がこの世界に存在するのだろう。
さらに、この作者が書いたらしい挿絵を見て俺はさらに驚愕する。
そこには紛れもないネコミの顔が書かれていた。似ているというレベルではない。完全に同一人物だった。
どうなっているのだろう。どうしてネコミがこの創作の中に出てきているのだろう。
もしかして、と俺は思い至る。
もしかして、ネコミは俺の知らないうちにこの作者から何か取材のようなものでも受けていたのかもしれない。そして、この作者は彼女を題材にした小説を書いた、そういうことだろう。
謎が解けた気になって、俺はひとまず読み進めることにした。これまでの「ゲーム」の性質上、ひとまず本に書かれていることは全部読まないと眩暈は起きないみたいだ。
読み進めているうちに、俺はさらに困惑した。中盤からさらに登場人物が増えた。その名も「カオリ」と「ユリエ」である。
――何でアイツらの名前がここに・・・・・・
俺の知らないうちにアイツらも取材を受けていたのだろうか。さすがに聞いたことがない。
最後に近くなってくると、いつもの眩暈がしてきた。
――今回は早いな。
そんなことを考えていた俺の意識は再び落ちていく。




