〜2016年9月14日夜〜
夢と現実を行き来して日常の謎を解いていく物語です。初投稿なのでお手柔らかにお願いします。
俺は奇妙な部屋にいた。
遡ること数十分前のことである。ちょうど日をまたいだ時間だろうか、俺はふと夜中に目が覚めた。
今何時だろうと思って時計を見ると、まだ午前二時である。もう一眠りしようと布団を被るもすっかり目が覚めてしまった。
仕方なく、台所に行って水でも飲もうと布団から出て部屋のドアを開ける。
開かなかった。
押しても引いてもダメである。鍵はかかっていないし、そもそも俺の部屋のドアに鍵なんてつけていない。
軽くドアを叩いてみても反応なし。誰かが外から俺の部屋を押さえつけているのかも、と思い声をかけてみるが同じくである。
壊れても構うものか、と力いっぱい引っ張ったり体当たりしたりしてもびくともしない。まるで鉄板だった。
――部屋に閉じ込められた。
自分が密室に、しかもまさか自分の部屋に閉じ込められるとは夢にも思わなかった。
――いや、まだ閉じ込められてはいない。窓の外からなら出られるはずだ。
俺はそう自分に言い聞かせ、窓の外に目を向ける。
窓の外が虹色だった。
そう、虹色だったのである。
午前二時なら窓の外は一寸先も見えない暗闇のはずだ。少なくとも青とか、白とか、自然現象として自然な色になってしかるべきだ。
しかし、窓の外は虹色だった。様々な色が混然一体となって窓の外を蠢いているのである。それは自然界では絶対に起こってはならない現象だった。
そして、部屋の中で聞こえる謎の音。それは何とも奇妙な音をしていた。大量の羽虫が飛びまわっているような、そんな不気味な音だった。
俺の頭はすでに半狂乱だった。ここは一体どこなんだ。なぜ、俺がこんな目にあっているんだ。家に帰りたい。
俺はベッドに戻って布団を被る。そうだ、こんなの夢に決まっている。
そして、小一時間ばかり経って現在に至る。
依然として目は完全に覚めている。しかも時計を見るとどうやら時計が動いていないようだった。
このままじっとしていても恐怖に押しつぶされるだけだ、と思った俺はひとまずこの部屋から出るために具体的な策を講じることにした。
そして、俺はこの奇妙な部屋を探索してみた結果この部屋について分かったことがいくつかあった。
一つは、この部屋は明らかに俺の部屋ではない、ということである。寝ぼけ眼で気付かなかったが、俺はこんな部屋に住んでいないし住んだこともない。
二つ目は、部屋がやたら汚いということである。俺はこれでも部屋は綺麗にするし、ごみはちゃんとごみ箱に捨てる。ところが、その部屋はまさにゴミ屋敷だった。窓の脇にある机の上には漫画本やゲームがいくつも置かれ、その脇のベッドの上にはいくつものコンビニ弁当や菓子袋が散乱している。本棚にはいくつもの書類や本が埃を被っている。どれも見慣れない本ばかりだ。汚れた衣類は床の上に散らばり、さらに何個か空いたビンが床中に転がっている。
ビンの匂いを嗅いでみると、ツンとした消毒液の臭いがした。
「これ酒じゃねーか!」そう言って俺はベッドにビンをブン投げる。
結局探索してみても部屋から出られる要素は何一つ見つからなかった。
途方に暮れた俺がふと机の上を見ると、一冊の本がある。
「本?」
その本は黒のカバーがかけられており、なぜかやたら目についた。気になった俺はその本を適当に手に取り、パラパラとめくってみる。
本の中は字でびっしりと埋まっていた。しかし、そこに書かれている字は一つも読めない。字が汚いとかそんなものではなくそもそも日本語ではないかのようだった。しかし、英語でもない。というか何語なのかよく分からなかった。この世界に存在する言語のようには見えなかった。
「何だこりゃ。ただの落書きか?」
そんな文字の羅列が延々と続いているページをめくっていると、次第に眩暈がしてきた。
初めは気のせいかと思ったが、それは段々と強く、段々と激しくなっていく。俺は気付くと立っていられなくなっていた。
たまらず、俺はベッドに倒れこむ。眩暈は治まることを知らず、俺はゴミだらけのベッドの上で七転八倒する。次第に瞼が下がってきて、俺の意識はどんどん遠のいていく。
そして、気付くと俺は自分の部屋に帰ってきていた。